AI(人工知能)やロボット業界の技術発展は、少子高齢化による労働力不足問題の対策として大きな期待を寄せていますが、AIによって代替される可能性から雇用に関する不安が高まっています。
しかし、AIにも得意とする分野と人の手を必要とする分野があり、すべての仕事がなくなるとは限りません。AIによって代替され、10年後にはなくなる仕事となくならない仕事はどのようなものなのか、職業別に分けてわかりやすく解説しますので参考にしてみてください。
目次
人工知能「AI」とは
AIは一般的に「人が実現するさまざまな知覚や知性を人工的に再現するもの」とされており、目的や用途に合わせて第1世代〜第3世代まで開発・研究されています。
しかし、AIはあらゆる分野に対応する汎用性が高いものではなく、人の認識能力や常識、感情などのすべてを理解し分析できるわけではありません。限定的な範囲の分野では人間を超えた能力を発揮するケースもあり、あらゆる分野で活躍しています。
49%の仕事がAIに代替される恐れがある?
2015年にオックスフォード大学と野村総合研究所の研究結果で「日本の労働人口の49%がAI(人工知能)などで代替可能になる」と発表されました。
加えて、マッキンゼー調査の「未来の日本の働き方」では「2030年までに既存業務の27%が自動化され、結果1660万人の雇用が代替される可能性がある」と記されています。
2つの研究結果から10〜20年後には約半数の仕事がなくなる可能性があると考えられており、将来の雇用が危ぶまれています。
なぜAIに代替されるといわれているのか
具体的な理由として、機械化・自動化によってヒューマンエラーを考慮する必要がなくなることが挙げられます。データ分析や情報収集などの業務の自動化で圧倒的な効率を生み出せるのも、人よりもAIが選ばれる理由です。
また、AIによる24時間稼働やAIが得意な分野だけ代替させるなど、限定的な範囲でのAIの導入で、生産性の向上や人件費の削除が可能になるなどのメリットもあります。
AIに代替される可能性を危惧して、AIテクノロジーを使いこなす業種や新たに生み出された業種に移行していくなどのワークシフトが重要視されるようになってきています。
AIの発達によってなくなる仕事
AIによって代替できる可能性が高い仕事は「人よりもAIを導入したほうが効率的に行なえる」「AIが完全に人と代替できる仕事」などが特徴です。
データの収集・計算・分析などの仕事であれば人が行なうよりも、AIの導入で正確かつ効率的に作業をこなせます。また、ヒューマンエラーなどの単純ミスや、人なら起こりうる失敗をなくすことが可能です。
決められた作業を行なう職種がなくなる可能性が高いとされており、電子マネーの普及やキャッシュレス化なども関係が深いと考えられています。
一般事務員
データの処理・入力作業などがAIに代替できるとされています。また、紙を使用して処理していた業務全般がフォーム入力などのデジタル化に移行でき、特にテンプレートの用意されているデータ入力や処理はAIのほうが正確に行なえるでしょう。
さらに、AIの機械学習能力を活用すれば、仕分け業務・支払い業務・問い合わせ対応などの業務も代替でき、ルーティンワークの多い一般事務員の仕事は減少する可能性が高いといえます。
銀行員
口座開設などの一般的な業務は、キャッシュレス化の普及やAIの代替によってなくなる可能性が高いとされています。将来的には機械学習能力などを活かして、融資するかどうかの判断もできるようになるといわれています。
人の持つノウハウよりもAIが処理するビッグデータ活用のほうが圧倒的な情報量と正確さがあることから、さらにAIの導入が進むでしょう。
警備員
監視カメラやセンサーの技術発展によって、24時間365日監視が可能です。警備員の配置が困難な場合でも監視・通知が可能であり、人間の疲労などによる警備のレベル低下の心配がありません。
ただし、監視・通知は高いレベルで可能ですが、即時対応はできないなどの課題があります。
建築作業員
無人化施工システムや建機の自動運転システムの開発によって、完全に無人での施工やタブレット操作による遠隔操作で建機の管理が可能となっています。
また、画像認識技術やドローンを活用した工場の進捗状況を判断するなどの利用も始まっており、高齢化や人手不足が問題となっている建設業界でも積極的なAIの導入が進んでいます。
スーパー・コンビニの店員
AIの画像認識を活用した自動決済の実現化を推進しており、将来的には無人コンビニなどの実現を推進しています。レジ打ちだけに留まらず、在庫管理・売れ筋の把握などにもAIの活用が見込まれており、顧客対応などの一部の業務だけが残る可能性があるようです。
AIが発達してもなくならない仕事
AIによって代替しにくい仕事の特徴は、クリエイティブな作業や複雑な判断が必要な業務などが挙げられます。特に芸術や哲学などの抽象的な概念を持つ分野、人の感情や心が深く関係する分野などは、現在のAIによる理解・分析は難しいでしょう。
また、何もない状態から新たな価値を生み出すクリエイティブな分野、伝統的な技術や人の身体の優位性を活かしたクラフトマン分野などに該当する仕事はなくならないと考えられています。
ITエンジニア
AIやロボットの設計・開発・運用などに関わる「ITエンジニア」の仕事は、なくなりにくいとされています。AIがAIを創造する、何もない状態から新しいサービスやシステムを生み出すことは難しく、AIによって代替されにくいためです。
AIの機械学習能力の活用で、システム設計は将来的にAIに代替される可能性がありますが、プログラミングに関しては人の手が必要な部分が残る可能性があります。
データサイエンティスト
データ収集や分析を行なう「データサイエンティスト」の業務のうち、データ収集はAIに代替される可能性があるとされていますが、データ分析の分野では人の手が必要な部分が多く残っています。
また、「データサイエンティスト」はAI技術を使ってデータ分析を行なっており、AIを使う側として生き残ると考えられます。
介護職
ルーティン化が難しく、臨機応変さが重要視される「介護職」も代替されにくいとされています。利用者の状態やちょっとした変化に気付き、即座に判断・対処する必要があるためです。
さらに精神的なケアが必要な場面が多く存在するのも、生き残ると考えられている理由です。
カウンセラー
人の感情の理解が困難なAIでは「カウンセラー」の仕事を完全に代替はできません。
人の悩みに対する答えは必ずしも1つではなく、人によって正解は異なります。また、人が相談したい相手は人であり、一緒に問題解決のために模索してくれる「カウンセラー」の仕事はニーズが増加する可能性があります。
コンサルタント
企業の抱える課題を解決するためのアドバイスなどを行なう「コンサルタント」の仕事は、企業ごとに合わせた柔軟な考え方を必要とするため、AIに代替されにくいと考えられます。
働き続けるためには、スキルや資格などの専門性を身に付けることが重要
データの収集・処理・計算などの単純作業はAIによって代替できると考えられています。一方、精神的なケアや感情に深く関わる業務のような正解が1つではない業務は、AIの不得意とする分野であり、人による対応が欠かせません。
AIの技術発展が進む現代でも、人にしか理解できないこと、人にしか生み出せないものはまだまだ存在し、その分野での専門性が強みとなります。
AIとの共存社会を生き抜くためには、新しいテクノロジーや人にしかできない新しい仕事に対応するスキルや資格などの専門性を身に付けることが重要です。