企業が採用活動を行う中で抱える問題のひとつに「内定辞退者の発生」が挙げられます。時間とコストをかけて内定を出したものの、辞退を申し出られると新たに採用活動が必要になるため対処したい課題です。
今回は応募者から内定辞退される可能性を軽減するために行いたい6つの施策を紹介します。採用市場の現状と絡めて解説するため、取り組みへの見通しを持ちやすいでしょう。
目次
内定辞退の現状
株式会社リクルート就職みらい研究所によると
「内定取得者のうち61.2%が内定辞退の経験をしている」とのデータが出ています。そのため、就職活動を進める人の中で内定辞退はそれほど珍しくない現状があります。
なお、株式会社マイナビの調査によると中途採用における内定辞退率は全体で11.0%です。採用市場においては新卒者の辞退が多いことがわかります。企業が採用活動を効率的に行うためにはこれらの現状を把握した上で、適切な対策が求められます。
内定辞退を申し出る5つの理由
ここからは実際に内定辞退を申し出る側が抱える辞退の理由を5つ紹介します。
1.第一志望がほかの企業だった
第一に、求職者にとって自社が第一志望でなかったケースが挙げられます。求職者は複数の企業の選考を受けているため、内定を出しても第一志望でなければ断られる可能性があるでしょう。そのため、内定率を高めるために面接時に「弊社は第一志望ですか」と確認する企業も見られます。
しかし、応募者はたとえ第一志望でなくとも「第一志望です」と答える傾向にあるため、完全に第一志望の応募者に絞って選定することが不可能です。
企業側は内定者全員に内定してもらえるわけではないと理解し、採用人数の増減に対応する必要があります。
2.労働条件が希望とマッチしていなかった
2つ目の理由として、内定を獲得したものの労働条件がマッチしておらず他の企業を検討したというものが挙げられます。求職者の中には業務内容よりも労働条件を重視する人もいます。そのため、企業説明会や面接時にどれだけ業務に魅力を感じても、残業時間が多かったり休日出勤の可能性があったりする場合は辞退される可能性があるでしょう。
特に、近年は働き方改革やワークライフバランスの見直しが進み、残業や賞与、キャリアアップの支援制度などより良い環境で働きたいと考えている人が多くいます。希望の労働条件とマッチしていなかった場合、内定辞退を申し出る可能性があります。
3.社風や職場の雰囲気がイメージと違った
選考の中で応募者は企業の社風や風土に触れるため、その中で職場の雰囲気が当初イメージしたものと異なり内定が出たものの辞退するケースが見られます。
社風はその組織の価値観や働き方のスタイルを如実に表しています。そのため、社風がイメージと異なる場合「長く働き続られるのか」と不安を抱え、内定辞退につながる可能性があるでしょう。
4.採用担当者の対応に不信感があった
応募者が採用担当者にネガティブなイメージを持った場合も内定辞退の要因となりえます。採用担当者の態度や対応に不信感を抱いた場合「窓口となる人が信用できないならば、入社しても人間関係でトラブルが起こるのでは」と考え、辞退が懸念されます。
採用担当者は広報や役員と並び企業を表す存在のため、応募者から企業へのイメージに直結する要因です。
5.内定から入社まで期間が空いてしまった
採用活動を行う中で、採用試験から内定、入社までの期間が長くなる場合は内定辞退のリスクが高まります。内定から入社まで期間が空いてしまうと「このまま就職していいのか」「ほかにも良い企業があるのではないか」と求職者の気持ちが揺らぐ可能性があるでしょう。
特に、新卒者の採用は書類選考から面接、内定まで数ヶ月の期間を要します。内定者と企業をつなぐ機会を意識的に設けなければ離れていく可能性があるでしょう。
内定辞退防止に役立つ6つの施策
ここからは内定辞退の理由を鑑みて、企業が取り組みたい6つの対策法を紹介します。
1.応募者への連絡は期間を空けない
まず、応募者は同時進行で他企業の選考を受けているケースが多くあります。そのため、応募者への連絡はスピーディーに行いましょう。
応募者は少しでも早く内定獲得を目指しているため、複数社への応募を行います。そのため、連絡が早い企業は選考が早く進んだり、応募者に好印象を与えたりするでしょう。一方で、返信が遅い場合は「不採用の可能性が高いのかもしれない」とネガティブに捉えられる可能性もあります。
採用活動は多くの応募者がいる場合は時間を要し、他の業務と並行することからつい内定者のフォローが後手に回ることもあるでしょう。しかし、定期的に「内定者に読んでほしいニュースのリンクまとめ」「入社までに読んでもらいたい資料の案内」などを送付して接触機会を設けると内定辞退の発生を防止できます。
2.自社に親近感を持ってもらう
自社の公式ホームページやホワイトペーパーを活用し、応募者に親近感を持ってもらうことも有効です。自社の雰囲気や働く人たちの様子を知ってもらうことで「自分が働いたらどうなるのだろう」と具体的なイメージを持ってもらえます。
3.入社までのスケジュールを周知する
内定者に対して入社までの流れを把握してもらい、安心感を与えることも大切です。内定者が辞退する理由として、連絡がなかったり内定の見通しがイメージできなかったりする点が挙げられます。
入社までの流れや手続きを詳しく説明すると内定者の不安が解消されるでしょう。内定通知と合わせてスケジュールの送付が効果的です。
4.内定後の相談にのる
内定から入社まで期間がある場合、意識的に内定者とコミュニケーションをとる機会を設けましょう。特に新卒の場合は社会に出ることに対して不安を感じる場合もあるため、悩み相談の場を設けることで不安を解消し、かつ企業への信頼を高めてもらえます。
5.トップと会う機会をつくる
内定者と企業の経営層やトップと交流する機会の設定もおすすめです。採用担当者だけでなく、企業トップと接触し、激励の言葉をかけてもらうことでモチベーションの向上につながるでしょう。
特に大きな企業の場合、トップとの接点が少ないため企業のビジョンや上層部の温度感が掴めない傾向にあるため、内定を機に直接メッセージを発信する方法は士気の向上に効果的です。
6.入社前研修を実施する
内定者においては新卒・中途問わず入社前研修を行いましょう。
入社前に再度企業の説明会を実施したりビジネススキル獲得の研修を実施したりすると、内定者が入社後の業務をイメージしやすく、内定辞退の防止につながります。特に、新卒の場合は働くことへの理解がまだまだ浅いことから、ビジネスマナー研修を行うと自信をつけて業務にあたることができるでしょう。
入社前から内定者の不安を軽減することが、内定辞退を減らしかつ離職率低下にも繋がります。
まとめ
内定辞退はどの企業にも起こりうる課題のため、事前に予防策を講じ、辞退者発生を見越して採用活動を進めることが大切です。応募者は複数社の選考を受けていることが予想されるため完全に内定辞退を無くすことはできませんが、内定者との接点を多く設けることで数を減らせるでしょう。