「新入社員の多くが1年以内に辞めていく」「自社の求める人物像からエントリーがない」採用の現場で上記のような問題を抱えている場合、企業と採用人材とでミスマッチが生じている可能性があります。
本記事では、早期離職の温床である仕事のミスマッチが生じる原因と、定着率アップのポイントを解説します。離職率の改善に努める採用担当者様はぜひ参考にしてください。
仕事のミスマッチが起こる8つの原因
まずは、なぜ仕事のミスマッチが生じるのか主な8つの原因について解説します。
1.求職者の情報を把握していない
まず挙げられる原因は、求職者が何を求め自社の応募してきたかをわかっていないことです。履歴書の読み取りが不十分だったり、面接の質問内容が適切でなかったりすると、獲得する情報の精度が落ちる可能性があります。
例えば、コミュニケーション能力とメンタルの強さを必要とする営業職の採用なら、対応力を判断するために特殊な質問内容を投げるといった対策が効果的です。
履歴書や面接で把握できる情報には限りがあるからこそ、面接の質問内容や選考フローは適切に設定しないといけません。
2.公開している企業情報が少ない
自社ホームページやSNSの投稿など、社外に発信する情報が少ないと、求職者の抱く自社へのイメージと実態にギャップが生じます。
企業情報が少ない状態とは、具体的に以下が挙げられます。
- 最新情報・自社のコンセプト・採用ページなど自社ホームページのコンテンツが充実していない
- 公式SNSの投稿が少ない・公式アカウントがない
- 情報の更新が遅い・ある時期から更新が止まっている
- 企業口コミサイトや顧客など第三者視点の評価情報が少ない
自社情報の積極的な開示は、求職者とのマッチングやエントリー数の母数形成に欠かせない要素です。少ない情報で社風やコンセプトを勝手に想像されないよう、戦略的に採用ブランディングを練っていかなければなりません。
3.ポジティブな情報しか伝えない
自社情報の発信でポジティブな要素ばかり開示していると、かえって求職者に怪しさを抱かせてしまいます。
例えば、自分が高額な家電製品を買う際、製品のメリットだけを見て購入を決定するでしょうか。多くの場合、類似製品と比較したり、デメリットがないか調べたりするはずです。同様のことが採用市場でも当てはまります。
求職者も企業の強みや弱みを比較検討してエントリーを決めるものです。ポジティブな情報ばかりだと入社前と入社後のギャップが大きいだけでなく、怪しさからエントリーを避けるといった事態もあり得ます。
ポジティブな情報とネガティブな情報をバランスよく発信し、透明度の高い企業イメージを構築しましょう。
4.企業が求めるスキルと求職者のスキルが合っていない
企業側と求職者側でスキルのミスマッチが生じると、業務の停滞や採用人材の早期離職につながります。
スキルのマッチングは実力の発揮や仕事に対するやりがいを実感させるために必要な要素です。したがって採用人材に長く働いてもらうには、スキルの適性が欠かせません。
以下は、厚生労働省が発表した離職に関する調査結果です。
出典:厚生労働省「令和2年 転職者実態調査の概況( 個2.離職理由)」
上記のデータから、離職原因の26%は仕事内容の満足さに起因するものだとわかります。
採用戦略を立てるうえでは、求人情報に求める人物像やスキルセットを条件として掲載して、採用基準を明確にしましょう。
5.求職者の適性を理解できていない
求職者のスキルや能力を見極められていないことで、人選を誤る可能性があります。必要とするスキルと異なるスキルを持った人材を採用すると、企業側もうまく活用できませんし、採用された側の不満にもつながります。
最悪の場合、離職者の口コミ投稿で企業イメージを損なう危険もあるため、求職者の適性は慎重な判断が必要です。採用後のミスマッチを防ぐためにも、適性の基準を明確化しましょう。
6.求めるキャリアや役割を伝えない
採用後のポジションや役割、キャリアパスが不明瞭だと、入社後に思うようなキャリアアップができず早期離職につながる可能性があります。
意欲的で優秀な求職者ほど、入社後にやりたいことやキャリアパスが決まっているものです。優秀な人材を逃さないためにも、企業側は応募者に対しキャリアや役割を明確に伝えなければなりません。
入社前と入社後で仕事の内容が異なるといった状態では、早期離職やモチベーション低下につながるのも当然です。特に近年の売り手状態にある現在の採用市場において、キャリアのマッチングなしで社員の活躍や定着は難しいといえます。
適切な部署やポジションへ人材を配属するためにも、両者の活躍イメージをマッチングさせましょう。
7.入社前後のギャップがある
入社前と入社後のイメージにギャップが生じると、早期離職やモチベーション低下につながります。この原因は求職者が企業情報を正確に把握できていないことが原因に挙げられますが、企業側の開示情報が少ないのも理由の1つです。
近年は人間関係や労働環境が原因で離職する人も少なくありません。企業理念や実績など会社の基本情報だけでなく社内の雰囲気や社内イベントなど、積極的な情報共有が求められます。
8.入社後のサポート体制が不十分
人材を採用した後のサポートや初期のフォローが不十分だと、業務スピードや職場環境に人材が置いてけぼりをくらい、早期離職につながる可能性があります。
入社後すぐは、仕事や環境に慣れるまで不安を感じやすく様々な悩みが発生するものです。職場に慣れて実力を発揮できるまでは、新入社員の相談役や職場環境のヒアリングを実施してサポートしましょう。
「採用の軸が定まっていて労働環境も悪くないのに人材の定着率が低い」このような悩みがある場合は入社後のサポート体制が不十分かもしれません。
仕事のミスマッチを防ぐ5つの対策
ここからは仕事のミスマッチを防ぐための具体的な5つの対策方法について解説します。
1.採用基準や求める人物像を明確にする
自社が求めるスキルや能力など、採用で求める人物像や採用戦略の軸を明確にしましょう。採用で求める人材は、人手を欲している部署や空席のポジション、取り組むプロジェクトによって異なります。
採用した人材を活用して目指すゴールや面接・テストの実施方法など、具体的な採用戦略を策定し、求める人物像へと落とし込みましょう。明確な採用基準があることで、採用後のミスマッチや離職率低下につながります。
2.企業情報をできるだけ公開しておく
求職者がエントリーしやすいよう、また入社後のミスマッチを防ぐためにも企業情報はできるだけ開示しましょう。
求職者はさまざまな情報媒体から企業情報を収集します。したがって情報の掲載先は自社ホームページだけでなく、公式SNSやオウンドメディアの立ち上げ、会社説明会の実施も行い、世間への露出を多くしなければなりません。
また、情報は社内イベントの風景や従業員インタビューも載せ、会社の実態と応募者が抱くイメージのギャップをできるだけなくせる内容にしましょう。
3.社員と交流する機会を用意する
入社前に自社の社員と交流できる機会を設けることで、入社後のイメージを掴んでもらいましょう。内容は簡単な研修やインターンでもいいですし、懇親会や飲み会を開催するだけでもOKです。
食事の席を設けるのは新入社員の緊張を解きほぐす役割もあるため、少々カジュアルなもので構いません。会社の社風や雰囲気を味わってもらうだけでも、定着率はぐっと上がります。
4.長期インターンを利用する
新入社員や応募見込みのある人材に対し、長期インターンを実施する方法もミスマッチ対策に効果的です。一定期間業務に携わることで、業務内容や労働環境の感覚を再認識してもらえます。
長期インターンは、入社前後のギャップが生じなくなるため不満も生まれにくく、早期離職の防止にもつながります。1年以内の離職率が高い問題を抱えている場合に効果的です。
5.リファラル採用を導入する
リファラル採用とは、従業員や取引先企業から自社にマッチした人材を紹介してもらう方法です。業務内容や雰囲気など自社について詳しい人から紹介してもらえるため、入社後のミスマッチが少ないメリットがあります。
また、紹介した人の面目があるため、採用人材も簡単には辞めずに頑張ってくれるでしょう。人材募集にかけるコストも少なく済むため、少人数で優秀な人材を採用したいときに効果的です。
仕事のミスマッチは5種類に分けられる
仕事のミスマッチは大きく分けて5種類に大別されます。ここでは採用後に起こりやすい仕事のミスマッチについて解説します。
1.仕事内容におけるミスマッチ
仕事内容のミスマッチとは、入社前と入社後で、期待していた仕事内容と実態にギャップが生じることです。主に未経験転職や新入社員の採用でよく起こります。
経験のない業種に関しては特にイメージのずれが生じやすいため、企業情報の積極的な公開や長期インターンを実施して、自社で働くイメージを掴みやすくしましょう。
2.雇用条件におけるミスマッチ
雇用条件のミスマッチとは、入社前の雇用条件と雇用後の認識にギャップが生じることです。主に求人情報が不十分だと起こり得ます。
雇用条件は応募者側からは聞きにくいものです。したがって、採用通知後に確認のメールを送る、入社前相談会を設けるなど条件のすり合わせはできるだけ企業側から行いましょう。
3.社風や文化におけるミスマッチ
社風や組織文化のミスマッチとは、労働環境の雰囲気や従業員同士の価値観が合わないことです。主に自社の公開情報に嘘が混じる、またはポジティブな情報しか公開していないことで生じます。
よくある例としては「風通しのよい組織作りがコンセプトだったのに、実際はガチガチの縦社会だった」「残業なしでOKと書かれていたのに、みんな残業するから仕方なく自分も合わせるハメに…」といったものが挙げられます。
社風や文化のミスマッチは早期離職の可能性を高めるため、応募者を募る前に企業理念や働き方の様子をホームページやSNSで公開して認識のずれをなくしましょう。
4.職場の人間関係におけるミスマッチ
職場の人間関係のミスマッチとは、上司や部下、同僚など従業員同士の関係性や価値観が合わず、居心地が悪くなることです。主に企業側が応募者の性格を捉え違えたり、選考中のコミュニケーションが不足したりすることで生じます。
例えば、仕事に対し積極的な人と保守的な人を同じ部署に配属すると、衝突するのは目に見えています。また、既に軋轢が生じている環境に新入社員を配属しても、能力の発揮は期待できません。
採用人材の定着率を上げるには、応募者の適性を採用担当が見極めたうえで、適切な部署に配属する必要があります。職場の人間関係が悪い場合は、事前に打開策を講じておかなくてはなりません。
職場環境を整備した上で、長期インターンや社員交流を実施しミスマッチを防ぎましょう。
5.キャリアにおけるミスマッチ
キャリアのミスマッチとは、求職者が思い描くキャリアと現実でギャップが生じることです。企業側で明確なキャリアパスを示せていないか、応募者側が与えられた役割に不満を感じると起こり得ます。
優秀な人材ほど、企業で働く自身の姿やキャリアを重視するものです。入社後の役割や業務内容を伝えたり、人事側でキャリアについて相談しやすい仕組みを構築したりしましょう。
人材定着を図るためのポイント
ここからは、採用した人材の定着率をアップさせるポイントについて解説します。
メンター制度を取り入れる
早期離職が多い入社直後は、人材の定着を図るためにメンター制度を導入しましょう。入社したばかりの社員は慣れない仕事や環境で不安を抱きやすい状態にあります。
同僚や上司との信頼関係も構築できていないため、わからないことを相談しやすい窓口を作ることが大切です。一定期間は経験豊富な社員がメンターとなりフォローを行うことで、問題解決につながります。
キャリアパスを共有する
入社前に企業側と新入社員側でキャリアパスのすり合わせを行いましょう。人事とキャリアパスを相談しながら決めていけば、社員もゴールを目指して頑張れるものです。
長期的な目標や将来像が明確になっていないと、社員も何を目指して仕事をすればよいか分からず、意欲の低下につながる恐れがあります。
人事が共に長期的な目標を相談し設定することで、モチベーションアップを図りましょう。
まとめ
採用におけるミスマッチは、多くが準備不足で生じるものです。もちろん応募者側の認識不足もあり得ますが、応募者が明確な目的と意図を持ってエントリーできるよう採用戦略を立てるのが、人事の役割といえます。
上記に述べたミスマッチの防ぐ対策を実践して、従業員の定着率アップをはかりましょう。