SDGsの広がりにより「SX」という概念が注目を集めるようになりました。しかし、SXと似た言葉に「DX」があり、違いがよくわからない方もいるのではないでしょうか。また、SDGsとSXとの関係性に疑問を感じている方もいるでしょう。
本記事では、SXの意味やDX・SDGsとの違い、具体事例などを紹介します。SXの意味やSXに取り組んでいる企業を詳しく知りたい方はぜひ参考にしてみてください。
目次
SXとは?DXやSDGsとの違いについて
SX(Sustainability Transformation)とは「社会のサステナビリティ」と「企業のサステナビリティ」を同化させ、そのための経営や事業変革を行なうことです。
「社会のサステナビリティ」は環境変動や感染症などで、社会の持続可能性を向上することを意味します。「企業のサステナビリティ」は企業の強みやビジネスモデルなどを中長期的に持続・強化し稼ぐ力を向上することです。
SXとDXとの違い
DX(Digital Transformation)はデジタルテクノロジーを用いて業務改革を目指すことです。業務改善やビジネスモデルの創出、競争優位性の確保を目的とし、比較的短期的な目標にされることが多い傾向にあります。
一方、SXは社会と企業の持続可能性が目的になるため、中長期的な視点を持っています。SX実現のためにデジタルテクノロジーを用いる場合もあり、DXはSXに含まれる活動の一つです。
SXとSDGsとの違い
SDGs(Sustainable Development Goals)は持続可能な世界を目指す国際目標のことです。2015年の国連サミットで採択され、2030年までに達成すべき「17の目標」と「169のターゲット」が示されています。
SDGsにはSXにも通ずる環境や社会に関する目標も掲げられているため、SXを推進していくことでSDGsの達成も可能です。
SXが注目される理由
日本では、経済産業省で行なわれた「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」のレポートがきっかけでSXが注目されるようになりましたが、その他にもSXが注目を集める理由が3つあります。
- 時代や環境の変化
- SDGsの広がり
- 企業イメージの向上
時代や環境の変化
理由の1つめは、DXの進展や地球温暖化、新型コロナウイルスなどによる時代や環境の変化です。現在、DX進展により急激な技術変革が起こっています。また、地球温暖化により異常気象や自然災害が起こり、経済に大きな影響をもたらしています。
コロナウイルスではパンデミックによる不安、テレワークの浸透も起こりました。これらの変化は社会にはもちろん、企業活動の持続性にも影響を与えます。どのような変化が起こっても企業が成長し続けるために、持続可能性を重視するSXが注目を集めています。
SDGsの広がり
SDGsの広がりにより認識されるようになったのが「ESG」です。ESGはEnvironment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字を合わせた言葉で、この3つの観点は企業が長期的に成長するために欠かせないと考えられるようになりました。
SDGsやESGを目指した経営を行なえば、投資家などから将来性や持続性のある企業と判断されます。つまり、SX推進ができているかがSDGsやESGを配慮した経営ができているかの指標になっています。
企業イメージの向上
現在、CO2排出量の増加などによる地球温暖化や森林の砂漠化、水不足などの影響もあり、SDGsやSXのようなサステナブルな取り組みへの興味が高まっています。
SDGsやSXの推進により環境・社会問題に積極的な企業であると認識されれば、企業イメージの向上につながる可能性があるでしょう。それだけでなく、株主や投資家からも注目を集められます。
SXの実現に必要なポイント
SXの実現に必要なポイントは、以下の3つです。
- 長期的な視点による目指す姿の明確化
- 企業と投資家との対話
- ダイナミック・ケイパビリティ
ここではそれぞれの詳細を解説していきます。
長期的な視点による目指す姿の明確化
まずは自社が長期的に目指す姿を明確化します。この場合、企業のサステナビリティはもちろん、社会のサステナビリティも踏まえることが大切です。どのような活動により社会の課題を解決していくか、その取り組みをどのように企業価値の向上につなげるのかを考えます。
目指す姿を明確化したら、合わせた戦略を構築します。このとき、自社に影響をおよぼすような環境変化を複数想定し、いずれの場合でも対応できるような戦略を考えるのも有効です。
企業と投資家との対話
SX推進による投資家へのメリットを投資家にも説明し、理解を得る必要があります。なぜなら、投資家のなかには短期的な利益を求め、SXの長期的な取り組みに価値を見いだせない人もいるからです。
SXは企業努力のみで達成できるものではありません。持続可能な社会を実現するために投資家はもちろん、取引先などを含めたさまざまな企業が協力し、長期にわたる企業経営のあり方について対話しブラッシュアップしていく必要があります。
ダイナミック・ケイパビリティ
ダイナミック・ケイパビリティとは、環境の変化に対応するため企業を変革させていく能力のことで、SXの推進には欠かせません。ダイナミック・ケイパビリティの能力には「感知力」「捕捉力」「変容力」があります。それぞれの意味は以下の通りです。
感知(センシング):脅威や危機を感知する能力
捕捉(シージング):機会を捉え、既存の資産・知識・技術を再構成して競争力を獲得する能力
変容(トランスフォーミング):競争力を持続的なものにするために、組織全体を刷新し、変容する能力
(引用:経済産業省「第2節不確実性の高まる世界の現状と競争力強化」)
ダイナミック・ケイパビリティは脅威や危機を感知し、合わせた施策を打ったり組織を変容していったりする能力であり、SX実現につながります。また、DXはダイナミック・ケイパビリティの向上に役立つため、SXとDXを合わせた取り組みが重要です。
SXの取り組み事例
SXの取り組み事例について、以下3社を紹介します。
- ネスレ日本
- ユニリーバ
- ユニクロ
それぞれの詳細を見ていきましょう。
ネスレ日本
ネスレ日本では、2030年までに直接的・間接的な温室効果ガス排出量を半分(2018年比)に、2050年までにゼロにする「Net Zero Roadmap」を発表しています。
実際、現在までに400万トンの温室効果ガス排出量削減、970万トンの温室効果ガス除去を達成しました。ほかにも、お菓子のキットカットではコスト増になるにもかかわらず、プラスチック製の外装を紙製に切り替えた事例もあります。
参照:ネスレ日本「温室効果ガス排出量実質ゼロのプレッジ(約束)から1年」
ユニリーバ
ユニリーバでは以下3つの分野で具体的な達成目標を挙げています。
- 地球の健康を改善する
- 人々の健康・自信・ウェルビーイングを向上する
- より公正で、より社会的にインクルーシブな世界に貢献する
具体的な目標には「2030年までに原料を100%生分解可能にする」などがあります。2022年には1年間にトラック台数を約4,000台、CO2排出量を約1,063トン削減に成功しました。
参照:ユニリーバ「サステナブルな成長のためのユニリーバ・コンパス」
ユニクロ
ユニクロでは、「PLANET」「SOCIAL」「PEOPLE」の分野でサステナビリティ活動を行なっています。「PLANET」分野の活動例は以下の通りです。
- 服を新たな製品や素材としてリサイクルする
- 支援衣料としてリユースする
- ペットボトルから服をつくる
ほかにも、ユニクロ店舗での難民雇用、難民の自立支援、国内外の災害支援などさまざまな活動をしています。
参照:ユニクロ「THE POWER OF CLOTHING」
まとめ
SXとは、企業・社会のサステナビリティを同化し、経営や事業変革を行なっていくことです。技術改革や地球環境の変化が激しい昨今、SXは長期的な企業成長に欠かせない取り組みです。
SXを推進している企業は柔軟性がありバランスが取れた会社とみなされるため、企業のイメージアップや投資家からの評価向上につながります。これからの企業価値は、まさにSX推進が鍵になるでしょう。
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