「日本人は勤勉だ」
こんな言葉を聞いたことはありませんか?
日本人は勤勉で、長時間労働しているというイメージが定着しています。実際に、日本の労働時間は世界と比べて長いというデータもあります。
しかし、労働時間が長いから良いという訳ではありません。厚生労働省が働き方改革によって労働時間を厳しく規制するようになったことからもそういえるでしょう。
では、なぜ日本の労働時間は世界と比べて長いのでしょうか。その原因と改善策を解説します。
目次
日本人は勤勉?日本の労働時間の現状
まずは、「日本人は勤勉」というイメージについて調べてみました。内閣府が5ヵ国の方1,000人を対象に、日本人に対するイメージ調査を行ったデータがあります。このデータでは、他国から見た日本人のイメージに関して“勤勉”という回答が上位に入っていました。
次に、労働時間はどうでしょうか。OECDによる「世界の労働時間ランキング」では、日本の1人あたりの年間労働時間は1,607時間でした。これは世界で30位なので、労働時間が長いとはいえません。
しかし、日本には短時間労働者も多くいます。短時間労働者の割合をランキングにしたものでは、世界で3位です。これらのデータを考慮して計算すると、フルタイムで働く日本人の年間労働時間は2,000時間となります。労働時間が世界1位のメキシコが2,128時間なので、実際に日本は世界と比較しても労働時間が長いといえます。
参考:内閣府・世界青年意識調査『日本人についてのイメージ』※18〜24歳/5ヵ国1,000人対象/1970年代から2000年代にかけて調査
参考:OECD(経済協力開発機構)『世界の労働時間ランキング』※2023年3月更新
日本の労働時間はなぜ長いのか?最大の原因とは
日本の労働時間が世界と比べて長いことが分かりました。それでは、その原因はなんでしょうか。
企業の人手不足や、一人当たりの業務量が多いこともあげられますが、最大の原因は生産性が低いことでしょう。
公益財団法人日本生産性本部が公表したデータによると、2021年における日本の1時間当たりの労働生産性は5,006円でした。これは、OECD加盟国のなかで27位です。
また、一人当たりの労働生産性は818万円で、OECD加盟国のなかで29位でした。加盟国が38ヵ国なので、決して高いとはいえません。よって、日本の労働生産性は世界で見るとかなり低いとわかります。
参考:公益財団法人日本生産性本部「労働生産性の国際比較 2022」
日本の生産性が低い理由
なぜ、日本は生産性が低いのでしょうか。その理由として次の2点が挙げられます。
- 残業・長時間労働の常習化
- イノベーションなど付加価値の不足
理由①残業・長時間労働の常習化
日本は、残業する習慣が根付いているといえます。近年、働き方改革によって残業時間の上限規制が設けられました。それに伴って、企業は労働時間を厳しく管理しなければなりません。
しかし、長時間労働の問題は改善されていないのが現状です。それは、次の2つの問題によるものです。
- 勤怠を切った後に労働を続けている
- 持ち帰り残業している
このようになると、残業時間の実態把握が難しくなります。下記の調査では、持ち帰り残業経験者は約31%という結果でした。さらに、このなかの約10%は持ち帰り残業が常習化していると回答しています。このように残業や、長時間労働が労働生産性を低くしているといえます。
参考:連合総合生活開発研究所『第34回勤労者短観―連合総研・第34回「勤労者の仕事と暮らしについてのアンケート」調査報告書―』
理由②イノベーションなど付加価値の不足
生産性を向上させるために、イノベーションは切っても切れない関係にあります。しかし、世界と比較すると日本はイノベーションに力を入れているとはいえません。
総務省が発表した「令和3年版 情報通信白書」では、デジタル競争力ランキング2020にて、日本は63ヵ国のうち、27位となっています。
これはなぜでしょうか。それは、日本はこれまで労働時間や、労働者を増やすことで労働生産性を高めていたからです。長年、この手法を採用していたため、イノベーションに対する予算を十分に取っていません。これにより、日本は世界と比べてイノベーションなどの付加価値が足りておらず、労働生産性が低くなっているのです。
生産性を向上させる改善策3つ
それでは、日本はどうしたら生産性を向上できるのでしょうか。改善策として次の3つが挙げられます。
- アウトソーシングを活用する
- デジタル化を検討する
- 業務効率化
改善策①アウトソーシングを活用する
自社の社員でなければならない業務以外はアウトソーシングを積極的に活用しましょう。そうすることで、社員の労働時間を削減できます。
さらに、社員が個人の業務に注力できるので、企業のサービスや商品の価値を高める効果も望めます。
アウトソーシングする業務は、次の3つを考慮して選択するのが望ましいでしょう。
- 売上に直接結びつかない事務処理
- 複雑なオペレーションを必要とする業務
- 自社の専門外の業務
このように、選定理由を明確にしてアウトソーシングすることで、企業としても業務のスリム化につながります。
改善策②デジタル化を検討する
労働生産性を向上させるには、マンパワーだけでカバーするのは難しいといえます。そのため、システムやツールの導入を検討しましょう。デジタル化を進めることで2つのメリットが考えられます。
- 業務が自動化され、社員の業務負担が減ることで時間を短縮できる
- ヒューマンエラーを防げる
例えば、データの集計や押印作業、社内便などはデジタル化することで時間を大幅に短縮できます。これらの作業は、計算機の使用や、部署間での書類の移動が発生するので、ある程度の時間や人が必要となるからです。
また、マンパワーだと、どうしてもミスが発生しやすくなります。デジタル化を進めることで、これも解消されます。
改善策③業務効率化
これまでご紹介した2つの改善点は、取り組むに当たって費用が発生する場合が多いので、会社規模で取り組まなければならないでしょう。
それでは、個人レベルで改善できることはあるのでしょうか。それは、業務効率化を進めることです。具体的には次の3つが挙げられます。
- 業務の洗い出し・スリム化
- 業務をマニュアル化する
- 資料のフォーマット化
業務の洗い出し・スリム化
業務の効率化を進めるには、担当している業務を把握することが大切です。まずは業務を洗い出しましょう。そして、業務量と業務フローを確認し、必要な業務と無駄な業務、簡略化できる業務に分けます。
無駄な業務は徹底的に削り、簡略化できる業務はフローを見直しましょう。そうすることで業務をスリム化させ、労働時間を短縮させることが可能です。
業務をマニュアル化する
業務のマニュアルを作成しましょう。業務の方法や、フロー、関係者や取引先の連絡先などを記載します。定期的に行う業務でも、期間が空けば記憶が定かでない部分も出てくるでしょう。
マニュアルを作成することで、段取りに費やす時間の短縮や、無駄なミーティングを省けます。また、成果物の品質を保つメリットもあります。
資料のフォーマット化
業務で使用するフォーマットを統一することも業務効率化につながります。企画書や指示書、報告書や議事録など、企業で指定のフォーマットがなければ作成しましょう。さらに、メールでの依頼文などもあらかじめつくっておけば便利です。
統一したフォーマットを作成しておけば、資料作成の時間短縮に加えて、確認作業も行いやすくなります。
まとめ
日本の労働時間は世界と比べて長く、その最大の原因は生産性が低いことでした。
生産性を向上させる改善策を3つご紹介しましたが、これは個人で解決できるものだけではありません。
厚生労働省が働き方改革を進めているように、企業としても生産性を向上させるよう改善しなければなりません。
もし、勤めている企業が生産性を向上させることに関心がないようであれば、転職を検討するのも一つの手段といえるでしょう。