アクティブラーニングとは、学修者自らが能動的に学べるよう設計された学習方法のことです。
多角的な視点からベストな解決策を選び抜く汎用的問題解決能力や、高いコミュニケーション能力などが身につくとされ、現在、文部科学省によって積極的に学校教育への導入が進められています。
近年では、社内教育や研修にアクティブラーニングを採用する企業も増えてきました。そこで本記事では、言葉の意味からビジネスやスキルアップに活かせる手法まで、わかりやすく解説します。
目次
アクティブラーニングとは 文部科学省が推奨する「能動的学修」
アクティブラーニングとは、学修者が受け身ではなく、自ら能動的に学びに向かうよう設計された学習方法のことです。日本では、「能動的学修」とも呼ばれます。
文部科学省は、アクティブラーニングを「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学習への参加を取り入れた教授・学習法の総称」と定義し、積極的に学校教育への導入を推進しています。
まずは、以下2点を確認しておきましょう。
- アクティブラーニングの目的・特徴
- アクティブラーニングによって身につく能力
アクティブラーニングの目的・特徴
アクティブラーニングでは、正しい知識を修得することではなく、正解のない議論や課題への取り組みを通して、問題を解決する力や課題へのアプローチ方法を身につけることを目指します。そのため、教える者から学ぶ者への一方通行型の講義形式ではなく、学修者が主体となって関わり合いながら学べる方法が採用されるのが一般的です。
具体的には、グループディスカッションやディベート、グループワークなどが取り入れられていることが多いでしょう。発見学習や体験学習、調査学習、問題解決学習などと呼ばれる学び方が有効だとされています。
アクティブラーニングによって身につく能力
アクティブラーニングの狙いは、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図ることです。これらの能力を育む過程において、自発的に課題に取り組む姿勢やクリエイティブな発想力、高いコミュニケーションやディスカッション能力なども身につくといわれています。
上記を総合すると、アクティブラーニングでは、生活を営む際や働くための知識・技能、さらにこれからの時代を生き抜くために必要とされる資質・能力が育まれるということです。人材の早期戦力化を望む企業では、新卒・中途問わず新入社員向けにアクティブラーニングを実施するケースも増えてきています。
アクティブラーニングが注目されている背景
アクティブラーニングが日本で注目されるようになったきっかけとされているのは、2012年8月に文部科学省が中央教育審議会で大学教育改革に向けて打ち出した方針です。
参照:中央教育審議会「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)」
この答申の背景には、少子高齢化やグローバル化への対応、人口減少といった現在日本が直面しているさまざまな課題があります。時代とともに変化した価値観やニーズに応じた人材を育む手段として、アクティブラーニングが注目されているのです。
アクティブラーニング実施時に意識すべき3つのポイント
アクティブラーニングの効果を評価する際に対象となるのは、以下の3ポイントです。
- 主体的に学べているか
- 対話的な学びが実践できているか
- 深い学びにつなげられているか
言い換えれば、実施時からこの3点を意識しておくと効果を得られやすいはずです。それぞれ詳しく解説します。
①主体的に学べているか
アクティブラーニングでは、まずは自らが学ぶことに興味や関心を持つことができているかが重要です。そのうえで、自分のキャリア形成と学習との関連性を意識しながら学ぶ必要があります。
また、目標を設定し、ゴールまでの見通しを立てて粘り強く取り組む姿勢も大切です。そして、学んだら終わりではなく、自主的に学習活動を振り返り、次の学習につなげることが意識できているかどうかが問われます。
②対話的な学びが実践できているか
アクティブラーニングでは、学修者同士や他者との対話の機会が多いのが特徴です。異なる考えを持つ人たちが集まれば、当然、議論に発展することも少なくありません。
対話や議論は、自分の考え方だけに囚われずに考えを広げて深めるチャンスです。アクティブラーニングでの学びを活かすためには、自己の意見を主張するだけでなく、傾聴する力も求められます。他者の意見や先人の考え方を手がかりにして考察する力が必要です。
③深い学びにつなげられているか
「深い学び」とは、物事を学習する過程において、それぞれの特性・特質を正確に理解し、それに合わせた正しい予想や解釈ができる状態を指しています。対話や議論で出てきたさまざまな見方や考え方を比較し、別の知識と関連づけることで、学びをさらに深め、物事を多面的にとらえられるようになっていきます。
自ら課題を見つけ、さまざまな意見を受け止めたうえで問題解決に向かう力は、多様性が重視される現代で最も求められる能力だといえるでしょう。
アクティブラーニングの代表的な手法
アクティブラーニングには、特に決まったフレームはありません。シーンに合わせて、さまざまな技法と構成で展開されています。
ここでは、アクティブラーニングでよく用いられている代表的なものや、ビジネスやスキルアップで活かせる手法をピックアップしてご紹介します。
- ジグソー法
- 学び合い
- KP法
- ビジネスやスキルアップで活かせる手法
ジグソー法
ジグソー法は、ある程度の人数で行われる協調学習の一つです。知識構成型ともいわれます。
実施方法としては、3人1組×3グループで行うのが基本です。グループごとに異なる資料や調べ方を用いて理解を深めたのちにグループをシャッフルし、各パートの話を持ち寄って意見を交換する(クロストーク)ことによって、テーマ全体への理解を深めます。
知識や考え方の幅が広がると期待されている手法です。
学び合い
学び合いは、「全員達成」「1人も見捨てない集団づくり」といったコンセプトのもとに実施される手法です。講師は極力関わらず、受講者が主体となって課題に取り組むことで、集団として課題の解決を目指します。
受講者が能動的に学習に参加することを目的とする際に多く用いられています。
KP法
KP法とは、日本環境教育フォーラム前理事長の川嶋直氏が提唱した「紙芝居プレゼンテーション法」の略称です。講義内容をあらかじめ複数枚の紙にまとめておき、講義の進行に合わせて黒板やホワイトボードに紙を貼り付けながら、まさに紙芝居のように説明や発表を展開していきます。
ビジネスやスキルアップで活かせる手法
アクティブラーニングの手法は実に多種多様で、オリジナルのものも存在します。状況に合わせて、適切な手法を採用するとよいでしょう。
最後に、企業研修でもよく取り入れられており、ビジネスシーンやスキルアップに役立つと思われるものをピックアップしてご紹介します。ぜひ、実践の参考にしてください。
- ロールプレイ/シミュレーション
設定したルールや関係性に沿ったシミュレーションを実施する手法
- ケーススタディ
事例をもとにしたシナリオに従って課題を解決する手法
- 協働学習
グループごとに1つのテーマに向き合い、協力し合って研究を重ねることでスキルを開発する手法
まとめ
アクティブラーニングは、課題に能動的に取り組み、多角的な視点を持って深い学びにつなげていけるよう設計された学習方法です。
汎用的問題解決能力や高いコミュニケーション能力などを身につけられることから、これからの社会を生き抜く人材の育成にも有効だと考えられています。
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