近年は終身雇用制度の崩壊や転職ブームも相まって、以前よりも退職を視野に入れる方が増加傾向にあります。
厚生労働省の調査では、就職後3年以内の離職率は新規高卒就職者35.9%、新規大卒就職者31.5%というデータが出ています
(出典:新規学卒就職者の離職状況(平成31年3月卒業者)を公表します|厚生労働省)。
スキルアップを目指し同業種で転職したり、起業したりと選択肢も豊富です。しかし、企業目線で見ると優秀な人材には定着してほしいと考えるでしょう。
今回は従業員の離職を減らすために知っておきたい原因と対策を紹介します。原因に適した対策を取り人材育成や定着率上昇につなげましょう。
目次
離職の主な原因5つを紹介
ここでは中途・新卒問わず、離職者の退職理由としてよく見られる原因を5つ紹介します。離職の原因は人間関係や労働環境への不満だけでなく、キャリアアップの観点から今の職場を離れる動きも顕著です。
人間関係
第一に、職場の人間関係が原因で離職する方が見られます。具体的には「直属の上司と相性が悪かった」「同じ部署に高圧的な人がいてストレスを感じた」などが挙げられます。
働く上で人間関係の悪化は多大なストレスとなるため、離職を決意するのは仕方がないことでしょう。最悪の場合はうつ病をはじめとしたメンタルヘルスにまで影響が及ぶ可能性もあります。
労働時間への不満
入社時の条件と実際に働いたときの労働時間の差に開きがある点も不満要素として挙げられます。具体的には「入社時は月の残業時間は多くとも20時間と聞いていたにもかかわらず、実際は月に80時間は残業している」というケースが挙げられます。
入社する人材に対しての説明はどうしても大まかだったり、情報が不足する可能性が高いでしょう。その結果、入社時に確認しきれなかった労働時間のギャップから疲弊して離職を考える方も見られます。
業務内容への不満
労働時間だけでなく、業務内容に関する不満もまた離職につながる要素です。たとえば「あなたには入社してから営業を3ヶ月担当したらバックオフィス業務を担当してもらいます。」との説明があったため同意して入社したものの、3年が過ぎても営業職をやっているケースがあります。
また、もともと経理の仕事をしたくて入社したけれど一般事務の仕事内容ばかりであったという不満も離職の原因です。
上記のように、入社時の業務イメージと現在の業務内容のギャップもまた離職の要因になりえます。
キャリアアップを見込めないから
若手社員の中には「このまま会社にいてもキャリアアップを見込めないのでは」と将来に不安を感じ、転職を検討するケースもあります。たとえば、入社前に営業職で経験をたくさん積み、ゆくゆくはコンサルタント業務に携わりたいと思っていても、いざ働いてみると営業は人手不足で日々の業務に精一杯という場合もあるでしょう。そして帰りは深夜になるため、資格取得の時間も取れないというケースが挙げられます。
キャリアパスを明確に描いている方やスキルアップを前提として業務に携わっている方にとって、今ある環境が適していないと離職の原因になるでしょう。
向いていないと感じるから
そもそも今の仕事が自分に向いていないと感じ、離職を検討する方もいます。たとえば、人とコミュニケーションをとることが苦痛にもかかわらず来客応対の業務を任せられている、ルーティンワークが得意だが飛び込み営業で新規顧客の開拓を求められるなど、自分に適していない場合は辛さを感じて離職を検討するでしょう。
業務の向き不向きは入職者本人が自己分析を行い見極めることがなによりも大切です。しかし、入社時に丁寧にヒアリングを行ったり、定期的に評価を行ったりする取り組みも欠かせません。特に社会人経験のない新卒社員にたいしては手厚い対応をとるのが望ましいといえるでしょう。
離職を食い止めるために企業ができる対策は3つ
ここからは企業目線で従業員の離職を減らす対策法を3つ紹介します。人材不足や人員の定着に課題を抱える場合、従業員の考えを定期的にヒアリングしたり教育体制を整える取り組みが効果的です。
採用前の職場見学や既存従業員と対話の機会を設ける
採用前にミスマッチを防止する取り組みは離職率低下に効果を発揮します。具体的には、入社前に入職希望者に対して接触する機会を設けたり、事前に不明点を解消してもらったりする機会を取ります。離職の原因として入社前後のギャップが挙げられることから、入社前に企業全体の雰囲気や就労体制を丁寧に説明すると入社後のミスマッチを予防可能です。
特に、面接時に職場内を案内したり、同じ部署で上司に当たる人材と直接話をする機会を設けたりすると応募者にとって齟齬を減らした状態で入社でき、離職率低下につながるでしょう。
既存社員に対する労働環境のヒアリング及び改善
既存社員に対するケアも離職率低下に欠かせない要素です。これから入社してくる人材にフォーカスすることも大切ですが、既存社員にヒアリングを行い改善活動に活かすことも重要です。
具体的には、就労環境の中で不満を感じるポイントや作業の効率化を高めるために必要としている点を確認し、企業の課題として改善に取り組みます。
教育体制の改善
新卒や若手社員を定着させる場合は、教育体制の充実が不可欠です。何もわからない状態で入社した新入社員に対して突然仕事を押し付けていては、双方ともに疲弊します。
最初に社会人としての言動や仕事に対する考え方、上司や同僚との関わり方などをレクチャーし、基盤を整えます。その上で、実業務で少しずつ力をつけていけるような教育制度が求められるでしょう。教育体制の整備は先が見えない先行投資です。しかし、大切に育てられた人材は企業にとって宝であり、戦力になり得る存在です。
転職時にできる!離職を防ぐコツは3つ
ここでは今から転職する方向けに離職を防ぐテクニックを紹介します。転職時は希望する業界や業種への理解を深めるだけでなく、自分自身の傾向についても理解して適した企業を選びを行いましょう。
業界研究・企業研究を行う
新卒はもちろん、中途採用であっても希望する業界や企業研究は欠かせません。自分がどんな会社で働くのかをリサーチし、長く働けるかやどんなキャリアを歩めるかが予想できるでしょう。具体的には、企業のサイトをくまなくチェックしたり、実際に働いている方の声を集めたりします。
自己分析を行う
自身について理解を深め、企業とマッチするか判断できるような準備も大切です。これまでの経験や職歴を元に、自分がどんな仕事や環境を好むか、また苦手なことは何かを自己分析すると自分に合った求人を選べる可能性も高くなります。転職を機に自分についてじっくり考え直す機会を設けましょう。
転職サポートを受ける
業界・企業研究、自己分析をしても自分に適した仕事が見つからない場合、転職の専門家からサポートを受ける方法もあります。近年話題の転職エージェントや、自分のスキルを元に企業側からスカウトを受けられるジョブプラットフォームが挙げられます。いずれも転職に関して十分な知識と見解を持った担当者がサポートを行うため、一人で悩む前に一度相談や登録を検討しましょう。
まとめ
多くの企業が従業員の離職を課題とし、試行錯誤を行っています。しかし、離職は従業員本人のモチベーションや描く未来によって起こるため、企業側は意志を汲み取りながら社内体制を整える必要があります。
入社前にヒアリングを行ったり、入社後も面談の機会を設けたりと優秀な人材の確保に取り組みましょう。