転職を検討し自分に合った企業を選ぶ際は、給与や年間休日など目立つ要素だけでなく労働組合をはじめとした取り巻く環境への着目がおすすめです。
労働組合がある企業は働き方への意見が反映される可能性を高められ、かつイベントで社員同士の交流を深められる点がメリットです。一方で、デメリットや注意点があるのも事実です。
当記事では転職を検討する方向けに労働組合の意義やメリット、組合がない企業へのイメージ是正について解説します。労働組合への理解を深めて転職に役立てましょう。
目次
労働組合とは？
労働組合は所属する従業員の条件が改悪されるのを避けるため、従業員が主体となり結成される団体を指します。
具体的には労働三権で保障されている項目に対し自社が適切な判断を下しているか確認し、行われていない場合は是正への取り組みを行います。なお、労働三権は下記のとおりです。
・団結権
・団体交渉権
・団体行動権
上記は労働者が働きやすい環境を維持・改善するため組合に参加したり、是正の文書作成・ストライキなどを認めたりすることを指しています。労働者が企業の言いなりになるのではなく、権利を保障されながら企業活動を行うために役立っています。
労働組合にできること
労働者を守る団体である労働組合は下記のことが可能です。
・組合員（従業員）の不満・苦情を企業側に伝える
・役職者との齟齬を減らし職場の風通しをよくする取り組みを行える
・職場のルールや賃金・労働時間について企業と話し合い、条件改善を目指せる
・組合員（従業員）の不当な解雇への指摘を行い雇用を安定させられる
・組合員（従業員）が昇給や昇格について公平性を確認できる
・組合員（従業員）が経営情報（経営陣が把握しているものの一部分）を把握できる
企業が大きければ大きいほど経営陣のメッセージは伝わりづらく、トップの意志が誤って伝達されたり、労働環境の悪化に上層部が気づけなかったりする可能性があります。
しかし、労働組合を設立すると社内の不満や疑問を提言できる機会が発生するため風通しが良くなるでしょう。
企業に労働組合があるメリット
ここからは企業に労働組合があるメリットを紹介します。労働組合がある場合、社内の不満を定期的に発信できたり他部署との交流機会が生まれたりするでしょう。
不当な扱いに対応できる
労働組合の意義は従業員の不当な扱いを避けて働きやすい環境を整えることです。そのため、ベースアップに不満を感じていたり、企業の施設や設備に不満を感じていたりする場合、労働組合を通じて自分の意志を伝えられます。
また、労働組合では自分の意志だけでなく一緒に働く従業員の総意として企業に伝えます。そのため、自分一人では言い出しにくいことも団結して提案できる点が大きなメリットでしょう。
社内での交流増加
労働組合は従業員の働きやすさを守る一環としてさまざまな社内行事を提案・実行します。イベントに参加すると、部署外の従業員とも交流できるため新たな人間関係構築につながるでしょう。
部署を超えた交流は業務に役立つアイディア創出や仕事へのモチベーションアップなどに寄与します。イベントの開催は企業にとっても従業員が団結力を高められる点がメリットです。
企業の方針について意見を述べられる
労働組合は業務の不満や労働環境の改善だけでなく、企業の経営方針にも言及できます。直接的な意思決定はできませんが、新規事業を検討している場合やニーズにそぐわない取り組みをしている場合、質問を投げかけたり情報提供を求めたりできます。
従業員は企業の方針に沿って実業務を進めますが、自分たちに損害が被る可能性をはらんだ新規事業の検討が進んでいる場合は意見することが必要です。
企業に労働組合があるデメリット
ここからは転職先の企業に労働組合があるデメリットを紹介します。他部署の従業員と交流が図れる一方で拘束時間が発生し、かつ費用がかかる点がデメリットです。
費用が発生する
労働組合に加入する場合、月々組合費として月々数百円〜数千円の負担が発生します。費用は組合の活動に充てられ還元されますが、イベントに参加したくない方や労働組合に意味を見いだせない方の場合は不満を抱えます。
組合役員として稼働する時間が発生する
労働組合に加入すると費用だけでなく拘束時間が発生します。組合の会議に参加したり役員になったときは定期的な集まりがあったりするでしょう。そのため、労働組合に興味がなかったり現在の社内環境に満足していたりする場合は時間のロスと考えてしまいます。
労働組合がない企業はある？
ここからは志望する企業に労働組合がないと悩む方向けに解説を進めます。転職希望先に労働組合がない場合「企業として大丈夫だろうか」と不安を抱える方もいますが、危ないか否かは2つのポイントを基準に判断しましょう。
ない場合は労働合同組合に加入している可能性がある
労働組合がない企業も、労働合同組合（ユニオン）に参加している可能性があります。労働合同組合は個人事業主や非正規の方でも加入でき、地域ごとに設けられているため、そちらに加入している可能性もあります。特に小さな企業は労働組合の設立に割く労力が少ないため、労働合同組合に加入して他企業との交流を図っている可能性があります。
小さな企業や設立から間もない企業にはない可能性が高い
近年はかつてと比較して起業が容易になりました。そのため、起業したものの設立から間もなかったり人数が少なかったりして組合がない企業もあります。また、仲の良いメンバーで起業したことから労働組合の必要性を感じないケースや元々風通しが良い職場のため不要なケースも見られます。スタートアップや小規模の企業であれば組合がないケースが多いでしょう。
なお、労働組合を作るには2人以上が集まれば設立自体は自由に行えます。しかし、設立までに労働組合法を鑑みた手続きが必要で煩雑なため、自分が入社してから立ち上げる方法は非現実的です。
労働組合がない企業だからといって「危険」ではない
転職を検討する企業を調べる中で労働組合がないとわかると「もしかして危険な会社なのではないか」と不安を感じるでしょう。しかし、労働組合がないからといってブラック企業のイメージを持つのは尚早です。
先述のとおり、労働組合がなくても元々風通しが良い企業や、従業員が主体的に福利厚生を整えている企業もあります。さらに、近年はネットの広がりから企業の評判を簡単に確認できるため、企業は社内環境の向上に尽力しています。労働組合の有無や入るか入らないかはメリットだけでなくデメリットを鑑みた上で決定がおすすめです。
なお、転職時に転職サイトや転職アプリを活用すると企業の労働組合や内情を把握しながら行動が可能です。転職時に働く環境に不安を感じる場合や自分に適した企業か見極めが難しい場合は専門家への相談がおすすめです。
まとめ
労働組合は労働者（従業員）の働く環境を整え、不満や疑問を解消するために役立ちます。
大きな企業の場合、自分の仕事がどんな成果につながっているか分かりにくかったり先行きが見通せなかったりしますが、労働組合を通じて取り組みを把握できるため、企業への信頼度を保ったまま業務に励めます。
しかし、拘束時間があったり費用がかかったりする点がデメリットとして挙げられるため、加入する際はじっくり考えた上で決定しましょう。「ほとんどの人が加入しているから」と半ば強制的に加入させられる場合もありますが、あくまで与えられた権利のため自分の気持ちを大切にしましょう。
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