「自分の好きな場所から、やりたい仕事ができたらいいのに……」と考えたことはありませんか?
これまでの日本では「仕事をするために職場に出勤する」のが当たり前でした。
しかし、新型コロナウイルスの流行をきっかけにオフィス外で働くワークスタイルに注目が集まっています。
なかでも働く場所にとらわれない究極の働き方といわれるのが「ワーク・フロム・エニウェア」です。
本記事ではワーク・フロム・エニウェアとはどのようなものか、その魅力や注意点をくわしくご紹介します。
目次
ワーク・フロム・エニウェア(Work From Anywhere)とは?
ワーク・フロム・エニウェアとは、働く場所にとらわれない働き方のことです。
「Work From Anywhere」の頭文字を取って、WFAと表記されることもあります。
国内外の大手企業では、労働時間の柔軟性も含めたコンセプトで、ワーク・フロム・エニウェアを導入する事例も見られるようになってきました。
ワーク・フロム・エニウェアを導入する企業であれば、正社員でありながら世界中のどこからでも働けます。
ワーク・フロム・エニウェアとテレワークの違い
ワーク・フロム・エニウェアとテレワークの違いは、「働く場所を限定しているかどうか」という点です。
ワーク・フロム・エニウェアは、あらゆる遠隔地が勤務場所に該当します。
一方のテレワークは、「在宅勤務」「モバイル勤務」「サテライトオフィス勤務」の3種類に大別され、基本的には自宅・出張先や出向先・サテライトオフィスで働きます。本拠地オフィスに出向かいない点はワーク・フロム・エニウェアと共通していますが、テレワークは働く場所が限定的だといえるでしょう。
ワーク・フロム・エニウェアが広まりをみせている背景
柔軟な働き方への関心が急速に高まるきっかけとなったのは、新型コロナウイルスの流行です。テレワークを導入する企業が急増し、オンライン会議ツールの普及など、実現環境の整備も進みました。
ロバート・ウォルターズが世界31ヵ国を対象に実施した調査によると、テレワークを導入した企業の86%がコロナ禍以降も在宅勤務制度の継続を計画しているようです。アフターコロナ時代でも、世界規模で場所にとらわれない働き方が継続・拡大していくと予想されます。
ワーク・フロム・エニウェアが労働者にもたらす5つのメリット
ワーク・フロム・エニウェアという働き方が労働者にもたらすメリットは、主に以下の5つです。
- キャリアがプライベートに左右されにくい
- デュアルキャリアを実現しやすい
- クオリティ・オブ・ライフの向上が期待できる
- 有事の際にも働ける
- 通勤の必要がない
キャリアがプライベートに左右されにくい
どこからでも業務に参画できると、本拠地オフィスに勤務できない状況に陥った場合にも現職を継続できます。パートナーの転勤や子育て・介護といったプライベートの事情を理由に、転職をしたりキャリアを諦めたりする必要はありません。
近年、男女を問わない産休・育休取得や、病気療養と仕事の両立への理解や支援が進んでいます。ワーク・フロム・エニウェアは現代の労働問題の解消にも貢献しうる働き方の一つです。
デュアルキャリアを実現しやすい
複数のキャリアを同時に積み上げていくことを「デュアルキャリア」といいます。ワーク・フロム・エニウェアでは、「現地でしかできない仕事」と「どこからでもできる仕事」を兼業する形でデュアルキャリアの実現も可能です。
複数のキャリアを同時進行できれば、経済的に安定するだけでなく、複数スキルの形成や人脈の拡大にもつながります。新たな可能性の発見や、選択肢の幅を広げるためにもおすすめの手段です。
クオリティ・オブ・ライフの向上が期待できる
ワーク・フロム・エニウェアを活用すれば、雇用されたまま世界中を旅する「デジタルノマド」が実現できたり、移民問題などを理由に参画が不可能だと思われていた他国の仕事へ参加できたりします。
心身の健康維持とキャリア形成を両立できるため、肉体的・精神的にも、社会・経済的にも生活満足度を高めやすい働き方だといえるでしょう。
有事の際にも働ける
どこにいても勤務を継続できるということは「常に安全な場所を選んで希望の仕事ができる」ともいえます。
先に経験したパンデミックでも、オフィスや通勤などの人ごみを避けつつ業務を継続する方法として、自宅で働く在宅テレワークが注目されました。自然災害や大規模停電の際も同様に、「どこからでも働ける」点は大きなメリットとなります。
勤め先の本拠地が被災しても自分は業務を行えるうえ、企業側から見れば滞りなく運営を続けられることがリスクヘッジになるでしょう。
通勤の必要がない
ワーク・フロム・エニウェアでは、通勤の必要がありません。これまで通勤していた人は通勤時間を仕事やプライベートに費やせます。
また、通勤ラッシュからも解放されストレスも軽減するでしょう。時間の余裕だけでなく精神的余裕も生まれるため、業務ミスの低減も期待されます。
さらに、通信環境さえ確保できれば通勤には不向きな山間部や島しょ部での勤務も可能です。
ワーク・フロム・エニウェアにおける注意点
多くの魅力を持つワーク・フロム・エニウェアですが、事前に把握しておきたい注意点も存在します。主に、以下の4点です。
- リアルタイムでのコミュニケーションが難しいケースもある
- メンバー間の仲間意識が希薄になりやすい
- 仕事とプライベートの区別がつきにくい
- 高い情報管理能力・意識が求められる
リアルタイムでのコミュニケーションが難しいケースもある
世界中のどこからでも仕事に参画できる環境では、同じプロジェクトにタイムゾーンが異なるメンバーが集まるケースも考えられるでしょう。多国間を移動しながら参画しているメンバーがいる場合は、移動のたびにタイムゾーンも変わります。
リアルタイムでのコミュニケーションが難しい点はあらかじめ理解し、チーム状況に合わせて、コミュニケーションツールやプロジェクト管理ツールなどを使い分けるといった工夫が求められます。
メンバー間の仲間意識が希薄になりやすい
メンバーの所在地やタイムゾーンが分散しているうえ、オンラインでしか顔を合わせない状況は、メンバー間の仲間意識が育まれにくい環境だといえるでしょう。共同作業が少ないプロジェクトであればなおさらで、孤独感を覚えることもあるかもしれまん。
良い成果やイノベーションは、人間関係が円滑なチームから生まれやすいものです。オンライン上であっても、フランクにコミュニケーションが取れる場を定期的に設ける工夫が必要でしょう。
仕事とプライベートの区別がつきにくい
ワーク・フロム・エニウェアを実践している人は、どこでも働けて、タイムゾーンも一定ではないために「いつでも対応できる」と誤解されがちです。自身で仕事とプライベートのオン・オフをコントロールできなければ、かえって長時間労働を強いられることにもなりかねません。
事前に、対応が可能や時間帯や業務範囲を明確に示し、自己管理を徹底するよう努めましょう。
高い情報管理能力・意識が求められる
どこででも働けるのは魅力的ですが、その分、情報漏えいのリスクは高まります。
特に人目が多い場所での作業は要注意です。盗み見や音声漏れによって、自覚のないまま情報を漏らしてしまう恐れがあります。人目がある場所では、絶対に機密情報は扱わないようにしましょう。
使用するネットワークからの漏えいや、デバイスの紛失にも細心の注意を払う必要があります。
まとめ
ワーク・フロム・エニウェアは、企業の社員でありながら世界のどこからでも働ける、新しい働き方です。
キャリアとプライベートの両立や、生活満足度の向上を実現しやすいことから、注目が高まってきています。コロナ禍以降も、さらに導入が拡大すると考えられるでしょう。