働き方の多様化にともなって、雇用形態や業種にとらわれない働き方が増えてきました。ライフスタイルに合わせて柔軟に業務を選択できることから、近年ではフリーランスとして働く人たちも増加傾向にあります。
今回は「ゲーム翻訳家」としてフリーランスで活躍されている大久保さんへインタビュー。「ゲーム翻訳家」になるまでのエピソード、日々取り組んでいる仕事の中身や魅力についてお伺いしました。
はじめに
経歴
大学在学中に、3年半アメリカ・ボストンに留学。学位を取得したのち、Amazon ADS(アレクサデータサービス)のボストン支社にて、スマートスピーカー「アレクサ」の言語能力向上をめざすデータ処理業務に従事。
帰国後はAmazon Japanの大阪支社に異動。ADSのプロジェクトメンバーとして、3年間勤務されていました。その後はゲームローカライズの外資系企業に2年間勤められ、現在はフリーランスで、英語から日本語へのゲーム翻訳家として活躍されています。
「ゲーム翻訳」とは
海外のメーカーが制作したゲームを日本語へ翻訳する仕事です。翻訳対象はゲーム内のセリフや操作方法から、紹介トレーラー、ゲームに関するマーケティング記事まで、多岐にわたります。
ゲーム翻訳家になるまで
「翻訳家になりたい」という夢
留学を決意する前から映像翻訳に興味があり、社会人経験を積み重ねるうちに「翻訳家になりたい」という思いが強まりました。Amazon社を退職し、翻訳学校に通い始めたのもその思いがあったからです。空いた時間を使って、ゲーム翻訳会社の音声部門でアルバイトもしていました。
しかし、ちょうど新型コロナウイルスの流行と重なってしまい、翻訳学校の講義が全てキャンセルされてしまったため、そこから2年間はゲームローカライズの企業で働きました。
翻訳とは全く別の業務に従事し翻訳家になる夢を諦めかけていた頃、以前アルバイトをしていたゲーム翻訳会社のディレクターから「リライトのフリーランスに興味はないか」と声をかけてもらいました。すぐに仕事が評価され、登録翻訳者として直接仕事を紹介してもらえたことが、本格的にフリーランスの仕事を始めるようになったきっかけです。
常にアンテナを張って勉強
「ゲーム翻訳」の仕事を調べてみても情報が出回っておらず特殊な仕事なのだと感じたため、ゲーム翻訳講座を受講したり、独学で基礎的な翻訳力を身につけたりするなど、常に最新の情報に対するアンテナを張って勉強し続けました。
また、翻訳者という業種はフリーランスが主流であり、インハウスでの雇用が少ないため、「翻訳者になる=フリーランスとして生活する」というイメージを沸かせるようにしていました。税金の手続きについてリサーチしたり、揃えておくべき道具を事前に確認しておいたりしたほうが良いと感じましたね。
ゲーム翻訳家になって
仕事内容
ゲーム翻訳とは、海外のメーカーが制作したゲームを日本語へ翻訳する仕事です。
翻訳対象はゲーム内のセリフや操作方法から、紹介トレーラー、ゲームに関連するマーケティング記事まで多岐にわたります。CATツールというデータベースを使用しながら進めます。
翻訳会社から共有されるガイドラインで、ある程度の世界観やキャラクター設定が決まっていることがあるので、それをもとに最適な翻訳を作っていきます。キャラ設定が確立していないような場合は、限られた情報や原文から概要をまとめ、キャラクターの人称などを一から作り上げます。翻訳対象のゲームが既に発売されているシリーズものであれば、ゲームタイトルを直接プレイすることも。自分がそのゲームに入り込むような想像力が求められます。
難しいと感じることは、翻訳するゲームが開発段階であることが多いため、実際の映像がなくニュアンスの汲み取り方に苦労するところですね。クライアントと連携をとりながら細かく対応していきます。
フリーランスという働き方
はじめは生計を立てるのに苦労しました。クライアントからの依頼があってこその仕事なので、タイミングによっては仕事がない状態に陥ることもありました。
フリーランスで生計を立てる人が多い業種なので、いかに他の翻訳家と差別化していくかが重要でした。翻訳家であっても人とのやりとりは欠かせないので、円滑なコミュニケーションを心がけて自分が思ったことは相手にしっかりと共有しています。
ゲーム翻訳家の仕事は、大半ひとりでパソコンと向き合う作業になりますが、好きなことを仕事にできていることがモチベーションに繋がっています。
ゲーム開発は機密性が高く外部にその工程が公表されることがないのですが、ディベロッパーからクレジットに名前を載せていいかと言われた時はとても嬉しかったです!
実際に翻訳に関わったゲームがリリースされること、お褒めの言葉をいただくことがこの仕事のやりがいです。