ビジネスシーンを生き抜くためには、怒りの感情とうまくつきあうことが大切です。いつもイライラしていたり、少しのことですぐに怒ってしまったりしていると、冷静な判断ができず、貴重なビジネスチャンスを逃してしまうかもしれません。
本記事では、怒りを上手にコントロールするスキルである「アンガーマネジメント」について解説します。ビジネスに活かせる4つの方法もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
アンガーマネジメントとは?
アンガーマネジメントは、1970年代のアメリカで誕生した心理療法で、自分のなかに生じた怒りを管理・コントロールするメソッドです。身につけることで、自分の感情と適切に向き合いながら、上手につきあっていけるようになるとされています。
元々は、罪を犯した人の更生プログラムとして活用されていました。普及が拡大するなかで、年齢・性別など関係なく、誰でも身につけられる点が注目されるようになり、今では、研修カリキュラムとして取り入れる企業も増えてきています。
「怒り」とはなにか
アンガーマネジメントをより深く理解するためには、まず「怒り」とはどのようなものかを正しく知っておく必要があります。ここでは、怒りの感情について、以下の2点を解説します。
- 怒りを感じるのは悪いこと?
- 怒りの裏に本当の感情が隠れている
怒りを感じるのは悪いこと?
多くの人が、怒りは「マイナスの感情」だと捉えている人でしょう。しかし、「喜怒哀楽」と表されるように、怒りは、喜びや楽しさと並んで人間に生まれつき備わっている大切な感情の一つです。
事実、ときに社会を変えるほどのエネルギー源ともなっています。史実をみてみると、革命の原動力は「虐げられた人々の怒り」であることがほとんどです。
身近なところでも試合で負けた悔しさや怒りをバネに次のチャンスで挽回する、といった例は見られます。
怒りは、上手にコントロールできれば大きな原動力ともなるのです。
怒りの裏に本当の感情が隠れている
アンガーマネジメントでは、感情は「第一次感情」と「第二次感情」に分けられます。第一次感情が自身の許容範囲を超えたとき、外に向けて現れるのが第二次感情です。
怒りは第二次感情にあたります。つまり、もとをたどれば深層にある第一次感情(不安や悲しみ、疲れ、ストレスなど)が隠れているということです。
アンガーマネジメントにおいては、怒りを爆発させる前に本当の感情に気づいて上手にコントロールすることが重視されます。
アンガーマネジメントを身につけておいたほうがよい理由
ここではビジネスシーンにおけるアンガーマネジメント修得のメリットをご紹介します。
ビジネスにおいて期待できるのは以下のような効果です。
- 職場で働きやすくなる
- 周囲からの印象がよくなる
- 時間を有効に使えるようになる
- ミスを減らせる
- 心身の健康も守れる
職場で働きやすくなる
怒りを前面に押し出す人が一人いるだけで、職場には緊張感が張り詰めるものです。アンガーマネジメントによって怒りを上手に管理・コントロールできるようになると、人間関係も円滑になりやすいでしょう。
怒る前に根本にある第一次感情が理解できると、相手に本当の思い(心配していた、不安だったなど)も伝えられるようになります。
周囲からの印象がよくなる
怒りっぽい人は周囲からあまりよい印象を持たれません。あまりに理不尽に怒り続けているような場合には、パワーハラスメントと誤解されるおそれすらあります。
アンガーマネジメントを修得していれば、周囲に対して短絡的にイライラをぶつける回数も減るでしょう。アンガーマネジメントはハラスメント対策にもつながります。
時間を有効に使えるようになる
怒りに身をまかせて行動していると冷静な判断が下しにくく、無駄な動きが増えると考えられます。アンガーマネジメントによって怒りをコントロールできれば、これまでより短い時間で正しい選択にたどり着けるはずです。
時間が有効に使えるようになる分、作業効率のアップも期待できます。仕事の達成感も感じやすくなるでしょう。
ミスを減らせる
アンガーマネジメントによって冷静に正しい判断ができるようになれば、時間の有効活用が叶うだけでなく、作業や選択のミスも減らせるでしょう。より作業の効率化が図れるうえ、結果的に周囲からの信頼度や評価も上がると予想されます。
心身の健康も守れる
ストレスは心だけでなく、身体にも大きな影響を及ぼすものです。些細なことにイライラせずにすめば、ストレスからくる心身の不調の予防にもつながります。
自分自身のストレス低減はもちろん怒りを周囲に向けないことは、職場全体の健康を守ることにもなるでしょう。欠勤者も減らせるため社内の業務もスムーズに進めやすくなります。
ビジネスに活かせる4つのアンガーマネジメント方法
最後に、ビジネスシーンで活かせるアンガーマネジメント方法をご紹介します。
すぐに取り入れられるものは以下の4つです。
- 怒りを感じたら「6秒間やり過ごす」
- 「~べき」という価値観を捨てる
- 怒りの原因・内容や度合いを記録しておく
- 相手の立場に立って考えてみる
怒りを感じたら「6秒間やり過ごす」
人間の怒りのピークは「6秒間」だといわれています。そのため「怒りを感じたら、とりあえず怒りが過ぎ去るまで6秒間やり過ごそう」という方法です。
やり過ごし方に決まりはありません。手軽なのは意識を別のところに向けたり、ほかのことに没頭したりすることでしょう。ゆっくりと数を数えながら深呼吸するのもおすすめです。
どうしてもおさまらないときは、思い切ってその場を離れてみてください。怒りの原因から一時的に距離を置くだけでも、冷静になれる場合があります。
「~べき」という価値観を捨てる
独自の価値観を捨てるのもアンガーマネジメントの代表的な手法です。
人は、自分の価値観に反する行動を取られた際に、怒りを感じやすいといわれています。「絶対にこうすべき」といった固定観念を持っていると、そのとおりにならなければ怒りを感じてしまうのです。
自分の考え方を柔軟にするためには新しい体験や経験を増やすとよいでしょう。価値観が多様化され、自分と他人双方に対する範囲も拡大します。
怒りの原因・内容や度合いを記録しておく
怒りを感じたときにそのときの状況や原因とともに、怒りの度合いを自分なりの基準でスコア化して記録する方法です。記録することで「怒りを外に出す」ことと、「なにに対してどれくらい怒ったのかを確認する」ことができます。
数値には、自分の怒りの変化が反映されているはずです。同じことが起こっても、以前は4だったものが、今回は2で済んでいるかもしれません。
記録から怒りの傾向や変化がわかれば、今後の対処・コントロールの道筋がみえてきます。
相手の立場に立って考えてみる
怒りを感じたときには、相手の立場に立って考えてみることも大切です。相手から見た自分を客観視できるためです。
ただし、ただ立場を入れ替えるだけでは、「自分の価値観で見る自分」が見えるだけです。相手の立場に立つとは、「相手の価値観に立って考える」ということで、そのためには、まずは相手の考えや思いに寄り添わなければなりません。
1対1の場面でないときには、「自分がお手本とする人や憧れの人物ならどうするか」と想像してみるのもよいでしょう。重要なのは、他人の価値観を通して自分を見つめ直すことです。
まとめ
アンガーマネジメントは自分の怒りと正しく向き合い、管理・コントロールする手法です。年齢・性別問わず身につけられて、ビジネスの現場にもすぐに取り入れられます。
感情のコントロールと聞くと、心理的な効果にばかり着目してしまいがちですが、ハラスメントが抑制できたり、健康の維持・改善が期待できたりと、思わぬ結果が得られることもあるものです。
怒りとのつきあい方にお悩みなら、まずは今回紹介したアンガーマネジメント方法から試してみてください。