熱中症と聞くと、暑い夏の日の屋外で長時間過ごすことで発生するというイメージをお持ちの方も多いでしょう。しかし、実際は屋外だけでなく、屋内でも発生するケースも少なくありません。職場の環境や働き方、そして体調管理によって熱中症のリスクが高まることもあります。
本記事では、熱中症の危険性やリスク、そして応急処置について詳しく解説します。仕事中の安全を確保し、健康を守るためにもぜひ参考にしてください。
目次
熱中症とは
熱中症とは、高温多湿の環境に長時間いることで、体温調整がうまくできなくなったり体内に熱がこもってしまったりする状態を指します。
熱中症は炎天下などの屋外だけでなく、室内で何もしていない場合でも発症するリスクがあります。重篤な症状である場合、救急搬送されるケースや最悪の場合は死にいたるケースもあるとても危険な病気です。
熱中症にかかったかも……チェックリスト
次のような症状があった場合は、熱中症にかかった可能性があります。
熱中症でよくみられる症状
- めまいや立ちくらみ
- 筋肉痛や筋肉のけいれん
- 体のだるさや吐き気
- 大量に汗をかくなど、通常と異なる汗のかき方をする
- 体温が高い
- 顔や身体のほてり
- 呼びかけに反応しない
- 意識の遠のきがある
- まっすぐ歩けない
熱中症は、たとえ軽症であったとしても注意が必要です。稀に後遺症が残るケースもあるためです。熱中症による後遺症が残ってしまうと、倦怠感やめまい、頭痛などが数週間から半年、場合によっては数年ほど継続したり、脳などの中枢神経障害を起こしたりするケースも考えられます。
熱中症かもしれないと感じる症状があった場合はすぐに応急処置を行ない、場合によっては救急車を要請するなどでして医療機関を受診しましょう。
仕事中の熱中症のリスク
職場の環境や業務内容によっては、熱中症になるリスクが高まります。特に暑さ対策が求められる職種をはじめとした、仕事中の熱中症リスクをご紹介しましょう。
【要注意】熱中症に特に注意すべき業種
屋外で長時間にわたって作業する職業に携わっている方は、夏場は常に熱中症の危険にさらされています。厚生労働省が公表した「令和4年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」によると、特に注意すべき業種は次のとおりです。
熱中症に特に注意すべき業種
- 建設業
- 製造業
- 運送業
- 警備業
- 商業
- 清掃業
- 畜業
上記職種以外にも、作業上通気性の悪い作業服や保護服を着用する場合や、高温多湿や直射日光、無風などの条件下での作業が必要な場合も熱中症にかかるリスクが高いといえます。
真夏だけでなく、暑さに身体が慣れていない時期なども、気温により体調が変化しやすいため注意が必要です。
屋内の作業でも熱中症対策は必須
屋外での作業だけでなく、屋内での作業でも外部の気温や室内環境によっては熱中症にかかる危険性があります。屋外と同じようにできる限りの対策を講じていきましょう。
次の章では、個人でできる職場での熱中症対策の方法をご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
【誰でも気軽にできる】職場での熱中症対策
誰でも気軽にできる職場での熱中症対策についてご紹介しましょう。
熱中症を引き起こす際は、「環境」「行動」「身体」の3つの要因が絡み合っています。ここからは、それぞれの3つの要因ごとの対策方法を詳しく解説します。
職場環境を見直そう
環境衛生上必要な事項が定められている「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」や「事務所衛生基準規則」では、オフィスの室内の温度は17度〜28度、湿度は40%〜70%に保つよう定められています。
熱中症にかかるリスクを抑えながら快適な作業を行なうためにも、24度から27度の温度、そして50%〜60%の湿度が保たれているかを確認してみましょう。
オフィスや屋内で作業する方は、次のような対策がおすすめです。
- パソコンなどの熱を発する機器に冷却パッチを取り付ける
- 椅子に設置する冷却シートを活用する
- 冷却タオルを使って体感温度を下げる
- 小型扇風機やサーキュレーターを使って空気を循環させる
また、屋外で作業する方は、冷却ファン付きの作業着の着用やこまめな水分補給、そして直射日光をなるべく避けた状態で作業するなどの暑さ対策を行ない、熱中症にかかるリスクをできる限り抑えていきましょう。
これらの対策を実践して、少しでも快適な作業環境を整えてください。
健康管理を意識しよう
日常の生活習慣によっても、熱中症になるリスクを抑えられます。特に、水分や塩分の摂取と質の良い睡眠は非常に大切なポイントです。
日常の健康管理を徹底しよう
毎日の生活習慣において、水分をこまめに摂取し、塩分もほどよく取るように意識することが重要です。
暑さで多くの汗をかくと、体内の水分と塩分が大量に失われます。体の水分が不足すると、血液の流れが悪くなり、体温を冷却する能力が著しく低下します。さらに、塩分が不足することで、体内の電解質のバランスが崩れてしまい、筋肉のけいれんや吐き気、頭痛などの熱中症の症状が出やすくなるため注意が必要です。
熱中症にかかるリスクを回避するためにも、0.1%〜0.2%の塩分濃度の食塩水やイオン飲料、経口補水液などをこまめに摂取し、失われた水分と塩分を補うよう意識してください。
さらに、栄養バランスの良い食事管理や睡眠環境などもあらためて考え直し、日々の健康管理を徹底していきましょう。
健康状態を確認しよう
作業環境が高温多湿の場合は、熱中症にかかるリスクが非常に高まります。高温多湿の環境での長時間におよぶ連続作業は避け、定期的に休憩を取るように意識してください。
体調がおかしいと感じたときには手遅れになっているケースも少なくありません。そのため、日頃から自分の健康状態を気にかけることが大切です。
作業中の急な体調の変化などに気づけるよう、朝の作業開始時や休憩時には同僚や部下の様子を確認するなど、周囲の人同士で気にかけ合うよう意識していきましょう。
熱中症になってしまった際の応急処置
万が一、熱中症にかかってしまった場合は、早急に応急処置する必要があります。
1. 涼しい場所に移動し、衣服を脱いで身体を冷やす
2. 適宜塩分や水分を補給する
まずはエアコンの効いた室内や車内、風通しの良い木陰など、涼しい場所に移動して体温を下げましょう。必要に応じて、衣服を脱がしたり服を緩めたりしてください。保冷剤や氷などを使って体温を下げることも大切です。
また熱中症が疑われる症状がみられた場合は、意識があるかを必ず確認してください。意識がない場合は、すぐに救急車を要請しましょう。自力で水分が飲めない場合も点滴などの処置が必要ですので、必ず医療機関を受診してください。
たとえ意識があったとしても、反応がおかしい場合はすぐに救急車を呼ぶようにしましょう。
まとめ
熱中症は、職種や環境に関係なく、誰にでも起こりうるリスクがある症状です。特に、屋外で作業が求められる職種や高温多湿や無風状態での作業環境の職場では、熱中症にかかるリスクが高まります。
本記事でご紹介した対策を実践すれば、熱中症にかかるリスクをより抑えられるでしょう。