近年の企業成長や業績回復の手段として注目を浴びているのが「OKR」です。「KPI」などと同様の目標設定や管理手法として導入する企業が増えています。
しかし、「OKR」の具体的な内容や導入方法がわからない、「KPI」との違いはあるのか、という方も少なくないと思います。
本記事では、OKRの仕組みやOKR導入の背景について解説します。また、個人目標の設定方法やメリットなどもご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
OKRとは?
「OKR」とは「Objectives and Key Results」の略称で、企業やチーム、個人など、階層ごとに目標設定を行い、全力で同じ重要課題に取り組む目標管理手法の一つです。
主な特徴は、従来の計画方法に比べて、高頻度での目標設定、追跡、そして再評価をすることです。
企業全体が同じ方向、優先順位、一定のペースで計画を進行することを目的としています。
OKRの要素
「OKR」には、略称から「Objectives(目標達成)」と「Key Results(主要な成果)」の2つの要素が含まれています。
それぞれの要素ごとに「OKR」の基本について解説します。
【OKR】Objectives
「OKR」の「Objectives」は、達成を目指す目標を意味します。目標は、シンプルで覚えやすいもの、定性的なもの、1ヵ月~四半期で達成できるものであることとされています。
全体的にチャレンジングな目標をイメージし、具体的な数値などの指標は入れずに、チームのモチベーションを高めて挑戦することが重要です。
【OKR】Key Results
「OKR」の「Key Results」は、「Objectives」への進捗を図るための指標を意味します。1つの「Objectives」に対し、2~5つの「Key Results」を用意するのが一般的です。
容易な目標ではないが実現可能なレベルで、ある程度ストレッチがかかった目標が望ましいとされます。
「OKR」と「KPI」との違い
「OKR」と「KPI」の大きな違いは、「KPI」が100%達成を目的とするのに対して、OKRは60~70%の達成率を目指している点です。
これは、Googleで実施されているスコアリングに倣っており、OKRを0.0~1.0の数値で評価しています。Googleの評価法では、すべてのOKRの平均点が0.6~0.7(達成率60~70%)に収まるのが理想とされています。
また、個人目標については、「KPI」はプロジェクトチーム内に限って共有するのに対し、「OKR」は社内全体で共有するといった点も異なるポイントです。
OKR導入が広まったきっかけとは?
「OKRが広まったきっかけはGoogle」ともいわれており、インテルでの成功体験をもとにGoogleへ導入したといわれています。
達成度が70%前後になるような高い目標を「Objectives」に掲げている理由は、創業者の「発想を大きく」という精神を紐付けするためです。
非常に困難ではあるが不可能ではない目標を提示することで、従業員の成長を促すことを目的としています。
【OKR】個人目標の設定方法
ここでは、実際にOKRを導入する際の個人目標の設定方法について解説します。
企業単位から個人レベルへ細分化する
「OKR」の目標を設定する際は、「企業全体」から「部署・チーム」「個人」の流れで設定していくのが基本とされています。
やみくもに目標設定するのではなく、企業全体の目標から細分化し、個人目標へとトップダウンすることが重要です。
また、設定した個人目標を企業全体で共有することによって、企業全体が同じ方向へ進んでいるかを確認できます。企業全体の軸をぶれさせることなく、一丸となって目標達成を目指すのが重要です。
OKR達成度60~70%を目安にする
Googleの評価法と同じく、「OKR」で設定する個人目標も達成率60~70%が目安です。この達成率は、モチベーションが高まり、実現可能な数字とされています。
目指す達成率が高すぎた場合、実現するビジョンが見えないことでモチベーションが低下する恐れがあります。よりチャレンジングな達成率とすることで、目標に対する意欲向上や自身の成長が期待できるような個人目標を設定することが重要です。
OKR達成度と人事評価の切り分け
「OKR」における個人目標の評価は、必ず人事評価と切り分けて考えることが重要です。
目標の達成率が人事評価につながることで、消極的で達成しやすい目標となりやすく、企業全体や個人の成長が見込めなくなります。
個人目標と人事評価を別物と捉えることで、保守的な動きをなくし、よりチャレンジングな新しい動きを促すことが必要です。
階層ごとの「目標の連動」によるメリットとは
「OKR」の特徴の一つでもある「目標を企業全体で共有する」ことは、さまざまなメリットがあります。
ここでは、企業の階層ごとに設定した目標を連動させることで得られるメリットについて解説します。
OKR達成への仕組みができる
目標を連動させることで得られるメリットとして、「OKR達成への仕組みづくり」が挙げられます。
企業、部門、チーム、個人の順で「OKR」の目標を立案することで、企業全体の方向性を整えることが重要です。個人の「OKR」の達成はチーム、部門などの「OKR」の達成へとつながり、企業全体の「OKR」達成の仕組みをつくりあげます。
モチベーションや団結力アップにつながる
次に考えられるメリットは、「モチベーションや団結力のアップ」です。
「OKR」の目標設定後は、目標への理解度や「OKR」への認識アップのための定期的なコミュニケーションが欠かせません。
定期的に「OKR」に関する問題点や解決策を考える時間を設けることで、従業員全体のモチベーションアップや団結力アップにもつながります。
従業員の能力向上の促進
「OKR」で設定した目標の達成には、個人の成長や能力向上が必須であり、スキルアップ研修や自主学習などによる従業員の基礎能力向上が期待できます。
また、企業や部門単位では、従業員の研修などに対する上司やOKR推進チームによるサポート体制をしっかり整えることが重要です。
OKR運用を成功させるポイント4つ
企業全体で目標達成を目指す「OKR」を成功させるためには、いくつかのポイントが存在します。
ここからは、OKR運用を成功させるための4つのポイントをご紹介します。
ポイント1.長期的な計画を立てる
「OKR」の導入から運用まで、長期的な計画を立てることが重要です。
「OKR」導入時の仕組みの整備には、多くの時間と労力がかかります。運用開始後の定期的な進捗確認や評価なども必要であり、長期的な計画を立てつつ、導入を検討する必要があります。
ポイント2.個人のリソースを確認する
企業や部門によっては、個人が複数の役割を担っていることも少なくないと思います。このような場合、目標や目標達成のためのアクションが多くなり、「OKR」が機能しないケースがあります。
特に「OKR」を管理する人材が不足していると、「OKR」が機能していても、細やかなケアができず、大きな効果が期待できません。
「OKR」に対するリソース不足の解消についてしっかりと計画を立てて、「OKR」を導入することを推奨します。
ポイント3.高頻度のフィードバック
「OKR」の達成には、企業全体の高い目標意識の維持が必須です。いくらチャレンジングな目標を設定していても、運用中のケアがなければ大きな効果は期待できません。
目標に対する高い意識を維持するためには、進捗状況に合わせた高い頻度でのフィードバックが重要です。
ポイント4.各階層の目標の整合性を確かめる
「OKR」を導入する際には、企業全体で同じ方向を向いて進んでいくことが大切です。
各階層の目標が企業の方針と異なる場合、個人の行動の方向性が企業とリンクしていないことになり、非効率な運用となってしまいます。
効率的な運用を目指すためにも、各階層の目標に整合性があることを確認し、企業全体に共有することが必要です。
まとめ
「OKR」は、さまざまな企業から注目を浴びている目標達成の手法の一つです。
「OKR」を成功させるためには、モチベーションアップを意識した目標設定や高頻度でのフィードバックが必要です。
また、個人の目標についても、企業と同様の方向性を持つ目標を設定する必要があり、目標達成には個人の能力向上が欠かせません。上記で述べた設定方法やメリットデメリットなどを参考に、OKR設定を行うと良いでしょう。