ハイブリッドワークとは、オフィスワークとリモートワークを組み合わせた柔軟な働き方のことで、様々な企業で導入が進んでいるワークスタイルです。
この記事では、ハイブリッドワークの働き方に興味のある方や、多様な働き方ができる企業への転職を検討している方に向けて、ハイブリッドワークのメリットやデメリット、実際の導入事例を詳しくご紹介します。
目次
ハイブリッドワークとは
ハイブリッドワークとは、オフィスワークとテレワークを組み合わせたワークスタイルのことです。従来のオフィス勤務のようにすべての従業員が同じオフィスに出社するのではなく、週5勤務のうち3日は自宅などで業務にあたり、残りの2日を出社するといった働き方を指します。
働く場所は、オフィスや自宅をはじめ、シェアオフィスやコワーキングスペース、カフェなど幅広い選択肢から選べるのが特徴です。ハイブリッドワークは、新しい時代の働き方として全世界的に認知されており、日本においても今後の働き方の主流になると考えられています。
テレワークとの違い
テレワークとは、従業員がオフィス以外の場所で働くワークスタイルのことです。自宅をはじめ、コワーキングスペースやカフェなど、リモートで仕事できる環境で作業します。
テレワークがオフィス以外の場所で勤務するスタイルなのに対し、ハイブリッドワークはテレワークとオフィスでの勤務を組み合わせるワークスタイルです。オフィスへの出勤も日によって取り入れるのがハイブリッドワークの大きな特徴といえます。
ハイブリッドワーク導入の背景
ハイブリッドワークが必要とされるようになった背景として、次の3つの要因が考えられます。
- パンデミックの影響
- テクノロジーの進化
- ワークスタイルの多様性
コロナ禍において、大勢の従業員が一カ所に集まる働き方には感染症予防の観点から、大きな課題があるとわかりました。その結果、多くの企業でテレワークの導入が急速に進みました。
テレワークを導入することで、通勤の必要がなくなるだけでなく、育児や介護との両立がしやすくなるなどの多くのメリットがありますが、その一方で多くの課題を抱えているのも事実です。
出社しないことで、従業員同士のコミュニケーション不足を招いたり、情報漏洩のリスクが高まったり、また従業員同士の業務の進捗状況がわかりづらかったりと、テレワークに対して働きにくさを感じる従業員も存在します。
そこで、テレワークとオフィスワークのメリットを両方活かせる働き方として、ハイブリッドワークが注目されるようになったのです。
ハイブリッドワークの統計調査からみる企業の普及率
コミュニティワークスペースを提供・運営するWe Work Japan合同会社は、2021年と2022年に「コロナ禍長期化における働き方」に関する調査を実施しました。
その結果、一般従業員のうちハイブリッドワークが認められている人は、2021年の48%から2022年には55%までに上昇しており、ハイブリッドワークが日本国内において浸透している状況が明らかになりました。
現在勤めているオフィスでハイブリッドワークが認められている人の割合が1,000人以上の企業では66%、1,000人未満では41.3%とあり、従業員の多い企業であればあるほどハイブリッドワークの対応が進んでいるとわかります。
一方で、経営者層や人事・総務担当者の74.9%が「柔軟な働き方は従業員にとって魅力的だと思う」と回答しており、従業員の勤務場所について「全て任せてよい」「ある程度任せてよい」と回答した割合が全体の69.4%に及ぶことがわかりました。
ご紹介した調査結果から、多くの企業がハイブリッドワークを前向きに検討していることにより、今後より一層ハイブリッドワークが一般的な働き方へとシフトすると予想されています。
ハイブリッドワークのメリットとデメリット
ハイブリッドワークにはさまざまなメリットがある一方でデメリットや課題点も存在します。こちらの章では、ハイブリッドワークを導入することの具体的なメリットやデメリットをご紹介しましょう。
メリット
ハイブリッドワークを導入することによって、次のようなメリットを挙げることができます。
- オフィススペースの有効活用
- 従業員の生産性向上
- 従業員の満足度向上やモチベーションアップ
- 多様な人材を確保できる
ハイブリッドワークを導入することで、オフィスで働く従業員が減り、オフィススペースに余裕が生まれます。余ったスペースに集中ブースやカフェテリアなどを新たに設置することで、オフィススペースを有効活用できるでしょう。
また、ハイブリッドワークを導入することで、従業員は業務に合わせた働き方を選択できます。オフィスワークに適した業務は出社をし、自宅で黙々と作業したほうがよい業務はリモートワークを選択することで、従来よりも生産性を高められるはず。
さらに、ハイブリッドワークを導入できれば、従業員のモチベーションにもいい影響を与えます。自分の意志で働く場所を選択することで主体性が生まれ、仕事に対するやる気や意欲が高まります。その結果、離職率の低下や業績拡大にも効果的といえます。
最後に、ハイブリッドワークは多様な働き方を実現できるため、それぞれの従業員にとって適切なライフワークバランスを維持しやすくなります。働きやすい環境が整備されていると、優秀な人材が集まりやすくなり、企業の長期的な成長に繋がっていくでしょう。
デメリットや課題
ハイブリッドワークを導入する際に考えられる課題は次のとおりです。
- コミュニケーション方法についての見直しが必要
- 帰属意識が低下するリスクがある
- 勤怠管理や勤務評価が難しい
ハイブリッドワークを導入すると、働く場所が二分化されるため、従来どおりのコミュニケーション方法では意思疎通がしづらくなるケースも考えられます。オフィス内で行うような相談や雑談をどのように行うかを考えながら、情報共有や連絡手段を検討する必要があります。
ハイブリッドワーク制度によって、コミュニケーションが希薄になることで、出社していない従業員の職場に対する帰属意識が低下するリスクがあります。組織エンゲージメントを高めるために出社に関するルールを決めるなどして、企業はオフィスワークとテレワークの両立を図る努力が必要です。
ハイブリッドワークを導入すると、勤怠管理が複雑化するリスクも生じます。様々な場所で業務にあたるため、予定していなかった会議や業務などに対応しづらくなります。このような課題を解消するためにも、勤怠管理ツールやグループウェアや社内SNSなどのツールを活用することが大切です。
ハイブリッドワークをうまく進める方法
ハイブリッドワークの導入を成功させるためには、いくつか意識すべきポイントが存在します。
まずは、ハイブリッドワークに対応できるオフィスで働くことが大切です。フリーアドレス制を導入している職場であれば、それぞれの従業員が業務内容や状況に合わせて働く場所を選択できます。
また、ICTツールの導入もハイブリッドワークを実現するための必須条件です。社用パソコンを持ち帰れるシステムやWeb会議システム、勤怠管理システムやチャットツールが職場で導入されているかを確認しましょう。
さらに、ハイブリッドワークでは社内データやデバイスをオフィス外に持ち出す機会が増えるため、セキュリティ対策を強化しなければなりません。
個人情報や企業の機密情報の漏えいやパソコンなどのデバイスのウイルス感染を防ぐためには、従業員たちの高いセキュリティ意識が必要不可欠です。セキュリティ意識を高めるための研修や勉強会に参加するなどして、チーム、そして企業全体のセキュリティレベルを高めていくなどの工夫が必要です。
導入事例
実際にハイブリッドワークを推進している代表的な企業の導入事例をご紹介しましょう。
マイクロソフト
マイクロソフトにおけるハイブリッドワークのルールとして、リモートワークは勤務時間の50%と定められています。さらに、イントラサイトを活用することで、管理者と従業員とのコミュニケーションを円滑にしています。
また、会議室には、相手がどこにいてもシームレスにつながる「Microsoft Teamsの会議室ソリューション」が設置されています。執務エリアには防音対策が施されたPhoneブースもあり、1on1ミーティングや電話会議に集中できる環境が整っているのが特徴です。
参照:「How Microsoft approaches hybrid work: A new guide to help our customers」|Microsoft
富士通
富士通株式会社では、2021年10月からアフターコロナを見据えて「Work Life Shift 2.0」を発表し、オフィス勤務とテレワークを組み合わせた働き方の実現に向けて取り組んでいます。
オフィスを「多様な従業員が集い・働き・学び・交わる場」へと転換し、生産性や創造性を高める働き方を推進しているのが特徴です。また、育児休暇や事業所内保育所の拡大をはじめ、旅先で活用できるワーケーション制度などウェルビーイングを実現するための施策も多数打ち出しています。
まとめ
幅広い業界や業種においてテレワークが浸透した現在、ハイブリッドワークは今後主流の働き方となる可能性を秘めています。ハイブリッドワークの推進に合わせて、オフィス環境を見直す必要性も高まっていくでしょう。
ハイブリッドワークを実現するためには、様々なツールの導入が必要不可欠です。特に、オフィスワークの従業員とテレワークの従業員間でのやりとりが不足しないためにも、コミュニケーションツールが活用できている職場であるかを確認してみるといいかもしれません。